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2022.09.17 08:00

【尖閣国有化10年】対話で安定した関係探れ

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 政府が沖縄県の尖閣諸島を国有化して10年たった。周辺海域では中国海警局の船による領海侵入などの挑発行為が常態化し、尖閣に近い台湾を巡っても米中対立が激化。偶発的な衝突への懸念が強まっている。
 領土を巡る摩擦は互いの国民感情を刺激し、両国の関係を一層悪化させかねない危うさを伴う。29日に迎える国交正常化50周年を機に、首脳から民間までの多層的な対話で安定的な関係を探りたい。
 尖閣諸島は1895年、日本政府が沖縄県編入を閣議決定。第2次大戦後に沖縄県ごと米国の施政権下に置かれ、後に日本に返還された。政府の姿勢も「わが国固有の領土であることは、歴史的にも国際法上も疑いがない」と一貫している。
 一方の中国は1970年代に領有権を主張し始めた。緊張が高まる直接のきっかけは、東京都による尖閣購入計画だったろう。中国に強硬姿勢をとった当時の石原慎太郎知事が2012年4月に打ち出した。実効支配を強めるためとして、購入資金の寄付を募った。
 当時の民主党政権は、都の保有より「平穏かつ安定的な管理」が可能として、9月に国有化へと踏み切った。政府としてはやむを得ない対応だったろう。だが、胡錦濤氏から習近平氏への体制移行期にあった中国を強く刺激したのは間違いない。
 国有化前にはほとんどなかった領海侵入の急増をみれば、中国に強硬姿勢の口実を与えた面は否めまい。中国海警局による日本漁船へのつきまといや居座りは施政権行使を既成事実化する試みにみえる。
 国有化の翌年1月には中国海軍の艦船が、海上自衛隊の護衛艦に射撃管制用のレーダーを照射。先月には中国軍が台湾周辺で大規模軍事演習を行い、日本の排他的経済水域(EEZ)にミサイルが落下した。いずれも突発的な衝突につながりかねない危険行為といわざるを得ない。
 相次ぐ挑発は、中国への国内世論に影を落とす。21年の内閣府調査では、中国に「親しみを感じない」人が79%に達している。国交正常化50年にも祝賀ムードは盛り上がっていない。
 だが、緊張が高まっているからこそ対話と交流の重要さは増す。日中の貿易総額は昨年、過去最高を更新した。両国の関係を断ち切ることは不可能だろう。
 政治面では50周年を控え、関係改善を探る動きが出てきている。8月の高官協議に続き、首脳会談も模索する。この流れを軌道に乗せるには政府の立ち位置も問われよう。
 岸田政権は尖閣防衛もにらんで防衛費増額を図るほか、外交・安保政策の長期指針「国家安全保障戦略」など3文書の改定を控える。むろん現実的な対応は必要だが、対決姿勢を鮮明にするだけでは安定的な関係は築けまい。
 「すべての紛争を平和的手段により解決し、武力または武力による威嚇に訴えない」。互いに50年前の共同声明に立ち返って向き合わなければならない。

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