2024年 04月25日(木)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2022.09.16 08:00

【五輪汚職】疑惑募るスポンサー選定

SHARE

 東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件の捜査が拡大している。大会スポンサー企業で2人目となる経営トップが逮捕される異例の展開となった。大会の根幹が揺らぐ事態であり、徹底した捜査で全容の解明を求めたい。
 東京地検特捜部は、大会組織委員会元理事、高橋治之容疑者=受託収賄容疑で再逮捕=側に賄賂を提供したとして、贈賄の疑いで出版大手KADOKAWAの会長、角川歴彦(つぐひこ)容疑者を逮捕した。
 角川容疑者は、KADOKAWA顧問の元専務ら2容疑者と共謀し、大会スポンサーの選定で有利な取り計らいを受けた謝礼などとして2019年9月~21年1月、KADOKAWA名義の口座から、高橋容疑者の電通時代の後輩が代表のコンサルタント会社に計6900万円を入金した疑いが持たれている。
 KADOKAWAは19年4月にスポンサーとなった。大会の公式ガイドブックや公式記録集などを出版している。
 角川容疑者は高橋容疑者に会い、スポンサーになる意向を伝えたとされる。逮捕前に取材に応じた角川容疑者は賄賂の認識を否定し、「そんな卑しい心で経営をしたことはない」と訴えた。金銭提供の名目については「スポーツ全体のコンサルタントと聞いている」と述べた。
 角川容疑者は出版の枠を超えて経営の多角化を進め、業績を拡大させた。会長になってからも影響力は絶大という。スポンサーになるのは角川容疑者の意向が強く働いた可能性が取りざたされ、関与の度合いが捜査のポイントと指摘される。
 特捜部は先に元専務らを逮捕し、実務担当者の供述を得て上層部の立件へと動いた。焦点となる指揮系統の解明を進めているとみられる。
 贈賄疑惑は複数のルートが浮上している。経営トップへの捜査は、紳士服大手AOKIホールディングス(HD)にも及んでいる。また、広告代理店大広(大阪)からも、高橋容疑者側に賄賂の可能性がある資金が渡っているようだ。
 捜査の展開は見通せないが、不正があるのであれば解明が不可欠だ。また、スポンサー選定の仕組みについても検証が求められる。
 五輪スポンサーは通常、1業種1社に限られる。企業に独占的に権利を付与することで、高額の協賛金を得ることができるためだ。東京大会はこの原則を緩和し、同じカテゴリーでも複数社の共存を認めた。
 その結果、五輪史上最多となる3700億円超を集めている。より多くの企業の参入を促したことが多額の資金をもたらした格好だ。その一方で、この独自の仕組みは、スポンサー選定の経緯を不透明にしたとの指摘がある。なぜそうなったのか背景を明らかにする必要がある。
 招致段階からトラブルが目立った東京大会だが、運営を巡る問題を放置していては今後の大会の在り方にも疑念を向けられかねない。透明性を高めるには不正を徹底的にあぶり出すことが重要だ。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月