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2022.09.11 08:00

【ザポロジエ原発】あらゆる手で事故回避を

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 原発事故がもたらす悲劇を考えれば、躊躇(ちゅうちょ)しているひまはない。ただちに安全確保に全力を挙げるべきだ。事前に手を打てるのだから、なおさらだ。
 国際原子力機関(IAEA)が、ロシアが占拠するウクライナ南部ザポロジエ原発の安全に関する報告書を公表した。
 原発敷地内で、核燃料や放射性廃棄物を貯蔵する建物などに砲撃があったことを確認。事故につながる脅威を指摘し、周辺を非武装化して安全管理区域とするよう呼び掛けた。
 ロシアとウクライナは互いに、砲撃は相手の行為だと訴えている。IAEAは攻撃主体は特定しなかったが、どちらであろうと、とにかく原発事故を回避することを最優先しなければならない。両国と国際社会は報告書に沿って、周辺の非武装化を急ぐ必要がある。
 非武装化の呼び掛けに対して、ウクライナ側は前向きな考えを示している。一方、軍撤退を受け入れられないとするロシア側は報告書に疑問を示し、追加説明を求めた。この件の重大性が分からないほど、ロシアの思考は硬直化してしまったのだろうか。
 ザポロジエ原発は欧州最大級で、1~6号機が並ぶ。外部電源に位置付ける近接の火力発電所からの送電4系統が、相次ぐ砲撃で寸断され、原子炉の冷却に必要な電力を、いま唯一稼働している6号機に頼る非常事態になっている。
 このままで6号機が止まると、頼みは非常用ディーゼル発電機のみとなる。稼働燃料の備蓄は10日分ほどといい、補給できる見通しはたっていない。燃料切れは炉心溶融などの過酷事故につながる。
 ひとたび事故が起これば、ウクライナのみならず周辺地域にも放射性物質が拡散する。自国にも及ぶ恐れがあるのに、安全確保に動かないロシアの言動は理解できない。
 そもそも、ロシアが原発を軍事的に占拠していること自体が、不法行為だ。報告書は、原子炉付近やタービン建屋内に置かれているロシアの軍用車両が安全管理を妨げるとして、撤去を要請した。
 また、原発のウクライナ人作業員が強いストレスにさらされ、安全性を脅かすミスが増える可能性も挙げた。意図しなくとも、偶発的な形で事故が起こるリスクがある。
 8日になってロシア側の一部幹部が、安全区域構想を「歓迎する」と発言したことが報じられた。だが、黒海からの食料輸出も、再開に合意したにもかかわらず妨害した例があり、懐疑的にならざるを得ない。速やかに行動で示すべきだ。
 IAEAの調査はロシア主導下で行われ、中立性も危惧されたが、専門家2人を現地に残すことができたのは大きい。不測の事態を招かないよう役割を果たしてもらいたい。
 今回の原発危機は予期せぬ自然災害によるものではない。人為的なものであり、取り組み次第で事故は防げる。日本も含めて、国際社会はあらゆる手だてを講じるべきだ。

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