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2022.09.02 05:00

【首相の姿勢】不信招いた後手対応

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 世論を甘く見たことで岸田政権への逆風が強まった。事態の打開策を打ち出しても実効性が伴わなければ、支持の回復は望めない。
 岸田文雄首相は、自民党と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係を断つと表明した。安倍晋三元首相の国葬の判断を含め、「政治の信頼が揺らぎつつある」との認識を示したことは、厳しい風当たりを一定受け止めているように見える。
 安倍氏銃撃事件から教団側との関係が浮かび上がった。首相は当初、「政治家の立場から、それぞれ丁寧に説明していくことが大事だ」と述べ、議員本人に事実確認と説明を委ねた。党も個別調査には慎重姿勢を示していた。
 しかし、閣僚らに接点が判明し、前倒しした内閣改造後にも新閣僚らに関係が相次いで発覚した。党主導での実態把握へと方針を転換せざるを得なくなった。後手に回った対応がかえって不信感を強めている。
 首相は会見で、信頼回復へ厳正な対応を取る考えを示した。所属国会議員に対し過去を真摯(しんし)に反省し、しがらみを捨てるよう求めた。
 そのためにはまず、実態を厳格に把握することが必要となるはずだ。だが、調査書を各議員事務所に配布して寄付や選挙支援の有無などの回答を求める方法で、十分に踏み込めるか疑問だ。第三者の立場からの徹底調査が必要ではないか。
 安倍氏と教団との関係を検証する是非に関して首相は、「十分に把握するには限界がある」と、早くも予防線を張った。こうした姿勢が調査に反映されるようでは説得力を失ってしまう。
 世論調査では、自民や所属議員の説明不足との見方が圧倒的だ。また多くが教団や関連団体との関係を断つことを望んでいる。それが確認できる体制を整えなければ調査も形式に終わりかねない。
 安倍氏の国葬に関して世論が割れている。法的根拠や全額国費での負担、弔意の強制への懸念などが論点となっている。
 国葬を営む理由として、安倍氏の首相在任期間が歴代最長だったことのほか、国際社会から弔意が寄せられることなどが挙げられてきた。ここへきて、海外要人を迎える儀礼上の必要性が前面に出る。だがそれは変更できない要因になりはしても、決定した理由にはならない。
 首相が国葬を判断したのは、安倍氏がまとめてきた保守勢力との関係を維持したい狙いも指摘される。党内基盤を強めたいのだろう。その思いが先走って説明を脇へ押しやれば、理解は得られるはずはない。
 首相は国会の閉会中審査に出席し、説明責任を果たす考えを表明した。首相の新型コロナウイルス感染による療養はあったとはいえ、もっと早くの説明が求められた。疑念や反発を深刻に受け止めず、やり過ごそうとしていたのなら問題だ。
 野党が要求した臨時国会の召集決定も見送っている。国会軽視の姿勢が強まれば、首相が掲げる信頼と共感は遠のくばかりだ。

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