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2022.08.18 08:36

少ない住民の生活支え つり橋(梼原町、津野町)―フォっトけないす

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 四万十川水系の風景と言えば、沈下橋が象徴的。ただ上流域の高岡郡梼原町や津野町では、同様に歴史あるつり橋も健在で、数少ない住民の暮らしをひっそりと支えている。

初瀬橋は幅1.3メートル。両手を広げれば左右の欄干に届く細さだ(梼原町初瀬本村)

初瀬橋は幅1.3メートル。両手を広げれば左右の欄干に届く細さだ(梼原町初瀬本村)

 梼原町初瀬本村。県道中平梼原線の南を流れる梼原川に、初瀬橋が架かっている。全長約50メートル、幅1・3メートル。車は通れないが、れっきとした町道初瀬本村線だ。

 完成は1938年。四万十川で最古の沈下橋「一斗俵沈下橋」(四万十町、35年完成)とそう変わらない。案内板によると、初瀬ダムの湛水(たんすい)域になるため、沈下橋ではなくつり橋になった。

 鉄製の欄干はさびつき、歩くとキュッキュッとワイヤのきしむ音。また一歩進むと、床板の木がぽろっと欠けて眼下の清流に落ちていった。なかなかスリリングだ。

「ここに座ってアユを見るがよ」と話す松山明さん(梼原町初瀬本村の初瀬橋)

「ここに座ってアユを見るがよ」と話す松山明さん(梼原町初瀬本村の初瀬橋)

 「そんなに使わんが、ないと困る」とは、橋の先の“ポツンと一軒家”に住む松山明さん(68)。つまりこの橋、ほぼ松山家3人の専用だ。500メートルほど上流に道路橋もあるが、松山さんは初瀬橋に座り込んで「夏は川の上からアユを見ながらビールを飲んで涼むのが最高」と笑った。

 梼原川をさらに南に下った梼原町島中(しまじゅう)にも木を敷いたつり橋がある。こちらは全長60メートルで、軽自動車がぎりぎり通れる幅だ。

 完成は60年。国道439号の対岸にある梼原川第三発電所への通用路として四国電力が設置、管理しているが、発電所近くの3世帯4人にも欠かせない。

「この橋には思い出はがいっぱいやね」と談笑する伊原長江さん=右=と久岡里子さん(梼原町島中の通称「寿橋」)

「この橋には思い出はがいっぱいやね」と談笑する伊原長江さん=右=と久岡里子さん(梼原町島中の通称「寿橋」)

 橋に正式名はなく、地元での通称は寿橋。住民の伊原長江さん(83)は「橋の修繕に雇われてペンキを塗った。思い出深いわ。架け替えてほしいけど10年したら誰もおらんろうねえ」。久岡里子さん(85)は「この辺は紅葉がきれいで、橋から眺めるのが好き。10月下旬ごろに来たらえい」と勧めてくれた。

国道197号と川向かいの旧道をつなぐ日野地橋。自動車は通行できない(津野町北川)

国道197号と川向かいの旧道をつなぐ日野地橋。自動車は通行できない(津野町北川)

 津野町北川には国道197号沿いの北川川に59年完成の日野地橋がある。全長45メートル。幅は2メートルあるが、入り口に柵が設けられ車は入れない。ただ対岸の集落住民にとっては、国道のバス停まで歩いて最短で行ける生活道だ。

 同町によると町内に残るつり橋はここだけだが、建設会社を営む50代男性は「昔は橋と言えばつり橋。あちこちにあった。山の大工はすごい技術を持っちょった」と懐かしむ。

 下流域とはまた趣の違う川辺の原風景。沈下橋に負けぬ観光地となる日も近い? (須崎支局・富尾和方)

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