2022.08.15 08:35
「なりたい自分」を大切に エステサロンスタッフ 大野香也さん(37)南国市―ただ今修業中
「この仕事に救われています」と話す大野香也さん(高知市桜井町2丁目の「SAT’s・GEM’s」)
化粧瓶がきらめく明るい店内。だが雰囲気は張り詰めていた。「あと5分」「考えゆう暇ないよ!」。指導役の声が飛ぶ中、懸命に化粧筆を動かす。
制限時間内にメークを仕上げる練習だという。丁寧に、かつ思い切りよく、肌の上で筆が弾む。客役の女性の頬が色づき、まぶたにパールが散っていく。
「終了!」の声。客役の女性は「良い色やんか。新色?」とうれしそう。指導役は「えい! 上手になった」と成長をたたえた。
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16歳、15歳、10歳、8歳の4児の母。夫は仕事が忙しい。20歳の最初の妊娠以来、子どもたちの世話をほぼ一手に担いながら、介護現場やパチンコ店などで働いてきた。
生命保険の営業職だった2020年、発達障害がある末っ子のケアのため、お客さんの都合に合わせることが難しくなった。悩んでいた折、エステサロンの仕事を知人に紹介された。
当時、育児による睡眠不足で肌はカサカサだった。「エステの仕事はきれいな人がやるもの。私ができるわけない」と気が引けた。
ただ考えるほど、やりたい思いも募った。美容の仕事に憧れはあるし、手に職を付ければ子どもたちとの時間も確保しやすくなる。「できんかも、じゃない。できるようになりたい」。覚悟を決めた。
紹介されたサロンで働くためには、顔の手入れから仕上げのメークまで、カリキュラムに従って技術を学ぶ必要があった。指導役に「違う!」と叱られ、涙ぐみながら練習を重ねた。
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