2022.08.15 08:45
元婚約者、戦争に奪われ 高知県宿毛市の山本さん「悲しいと言えないのが戦争の悲しさ」
子どもたちから届いたお礼の手紙を手に、戦時を振り返る山本肥生さん(写真はいずれも宿毛市橋上町)
安岡益雄さんから山本肥生さんに送られた最後の手紙。「〇〇」と派兵先は伏せられている
約80年前の戦時下、海の向こうから届いた元婚約者の手紙を、宿毛市橋上町の山本肥生(ともき)さん(96)は大事に保管している。
手紙の主は6歳ほど上のいとこで、兄のように慕った安岡益雄さん。婚約は親同士が決め、安岡さんの出征を機に解消されたが、その後も手紙のやりとりは続いた。最後には〈近日中○○に行く〉。伏せられた戦地から、安岡さんが戻ることはなかった。
山本さんは優しい夫と5人の子に恵まれ、戦後の激動期を生き抜いた。同じ時を経て、文字の薄れた手紙は問い掛ける。もし戦争がなかったら?
山本さんは「何とも言えない、不思議な気持ちになる」と静かに話し、訴える。「戦争があった悲しい時代を、忘れてほしくない」
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