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2022.08.15 08:00

【終戦の日】原点を見つめ直そう

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 ロシアによるウクライナ侵攻が、「戦争」を現実のものとして突きつける。中国の覇権主義的な動きにより東アジア情勢は緊迫度を増す。北朝鮮の不穏な動きも収まらない。それらに対抗すべく、日本国内では軍拡必要論が台頭する―。
 戦後77年。「終戦の日」を、これほど戦争への不安が高まった中で迎えたことはないのではないか。
 ちまたには、漠然とした焦りや危機感が立ちこめる。だが、ムードに流されるのは危うい。戦没者を追悼し、平和を祈念する日にあって、冷静に足元を見つめ直したい。
 ウクライナ侵攻は発生から間もなく半年になる。日々報じられる戦況は痛ましく、停戦の兆しは見えずに持久戦の様相を呈する。ロシアは核兵器の使用もちらつかせる。侵攻は穀物や燃料価格の高騰を招き、世界各地の経済や食料事情を圧迫し続けている。
 岸田政権は、「力による現状変更」の懸念を東アジアに重ね、ロシアに厳しい姿勢で臨んでいる。同時に、「台湾有事」を念頭に軍事活動を拡大する中国への警戒を強め、対抗するために日米同盟の強化にまい進する。それが中国や北朝鮮との摩擦を生んでいる。
 より俯瞰(ふかん)すれば、ウクライナ侵攻に伴って国際社会は、欧米・日本などの重視する民主主義と、中ロなどの専制主義の対立が加速している。
 こうした動きに国民は敏感だ。日本世論調査会の調査で、「日本が今後、戦争をする可能性がある」とした人は48%に上り、2年前から16ポイントも上昇した。調査後、米下院議長が訪台し、米中、日中間は一層緊迫した。いま国民が抱える懸念はさらに膨らんでいるのではないか。
 日本は防衛力の強化で対応する方針だ。岸田政権は、防衛費の大幅増額を表明し、敵基地攻撃能力を言い換えた「反撃能力」の保有も探る。米国の核を共同運用する「核共有」論も取りざたされた。国民の不安の背景には、そのような話が飛び交う国内の状況もあろう。
 国際情勢が変わる中、相手の侵攻を未然に防ぐ観点からも防衛力の増強は必要かもしれない。だが、「武力行使は抑制的で、必要最小限度に」というのが憲法の要請であり、戦後一貫してきた基本的な考えだ。これを忘れてはいけない。
 軍備増強は、軍拡競争を招く可能性もある。努めて抑制的に議論し、国民的合意を経た上で措置されるべきだ。財源論を棚上げし、額ありきで臨むような姿勢は論外だ。反撃能力などは憲法の掲げる平和主義、専守防衛を逸脱する恐れもある。
 日本世論調査会の調査では、戦争回避で重要な手段は「外交」がトップ、次いで「憲法の順守」が続いた。軍備増強のみに突き進まず、外交や経済安全保障など重層的な手だてで平和を求めよ、という意識の表れではないか。
 街並みが破壊されたウクライナの映像が、77年前の戦争の惨禍を想起させる。戦後の原点を改めて見つめ直す一日にしたい。

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