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2022.08.14 08:00

【日野データ不正】信頼失わせた企業風土

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 上層部に物を言えない企業風土で、相互のチェック機能も不足していた。このため過ちを正すことができず、信頼を失うことになった。企業の責任を軽視したことが招いた事態だ。その要因と誠実に向き合わなければ繰り返されかねない。
 日野自動車によるエンジンの排出ガスや燃費試験のデータ改ざん問題に関し、外部有識者による特別調査委員会がまとめた報告書は、排ガス不正は少なくとも約20年前から行われていたと指摘した。さらに前からの可能性もあるという。
 北米市場向け車両用エンジンで排ガスの認証に関する問題が起き、社内調査で国内でのデータ不正が明らかになったとして、日野自が今年3月に公表した。その際には、2016年から行われていたとし、それ以前も調べていた。
 報告書は、燃費の良い車両向けの減税措置の対象とするため、幹部が目標達成を求めたことを取り上げている。現場は開発できないまま不正に走ったと指摘し、また経営陣の当事者意識の欠如も批判した。
 不正をやめる機会も生かせなかった。16年には三菱自動車の燃費不正が発覚している。この際、排出ガス・燃費試験の観測データに関する国土交通省の調査に対し、不適切な事案はないとする虚偽の報告を行っていたことが判明した。
 現場担当者が一部データの存在を確認できず、内容に矛盾があったため、データ書き換えなどで試験が適切に実施されたように装ったようだ。データ管理の不備に加え、不正の常態化や罪悪感の薄ささえ感じさせるような状況だ。
 背景として日野自は、00年ごろから規模や量の拡大で現場に余力がなくなったと説明する。品質やコンプライアンスが後回しになったとの認識だが、修正されなかった。
 国交省によると、現行の生産エンジン14機種のうち12機種で排ガス不正が確認された。うち4機種は基準不適合だった。3月には、大量生産に必要な型式指定を取り消す行政処分を科している。
 影響は当然、日野自にとどまらない。エンジン納入先では出荷停止や販売延期を迫られ、建設機械にまで及んでいる。下請け企業や関連従業員にも関わってくる。不正の期間が16年から拡大したことで、不正があったエンジンの搭載車両の累計販売台数は、11万台超から56万台超に増えた。責任は極めて重い。
 環境を意識した対応や、企業経営の透明性はおろそかにはできない。国の認証試験の途中で排ガス浄化装置を新しいものに交換する行為や偽りの性能表示では、そうした要請に応えられるはずがない。
 調査委は「みんなでクルマをつくっていない」「世の中の変化に取り残されている」などと問題の真因を分析している。上意下達の気風が強すぎ、組織の縦割りや自由な議論ができていないなど厳しい指摘が見られる。改善するための提言もしている。大事なことはそれらといかに向き合うかだろう。

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