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2022.08.09 08:00

【よさこい開幕へ】開催の意義 胸に刻もう

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 もろ手を挙げて「楽しもう」と言える状況では決してない。むしろ、タイミングとしては最悪に近い。だからこそ、開催に踏み切る意義をしっかり胸に刻みたい。
 「2022よさこい鳴子踊り特別演舞」が、あすから2日間の日程で高知市で開かれる。
 新型コロナウイルス禍により、3年連続で中止となったよさこい祭りの代替イベントとして企画された。会場数が4カ所減り、参加が100チームを切るなど例年より小ぶりになるが、街頭に鳴子が響く夏の高知の風景が3年ぶりによみがえる。
 しかし、開催が「第7波」にぶつかってしまった。県内では1日当たり新規感染者が千人を超える日が続き、医療の逼迫(ひっぱく)度合いも増している。特別演舞が、状況の悪化を加速させる懸念も否定できない。
 それでも開かれるのは、よさこいが次代に継承されない危機に直面しているからにほかなるまい。
 2年間の空白で、鳴子や衣装製造など関連業界は廃れ、踊り子のよさこい離れも進んだ。関係者の「今年こそは」との思いは強かった。
 特別演舞はいったん、県民体育館での開催も取りざたされたが、参加者数や経済効果の観点から、通常開催に近い形に切り替えられた。危機感の裏返しだったといえる。
 主催する「よさこい祭振興会」には、医療体制への責任も担う県、高知市も入るが、ともに感染急拡大でも、開催を了とした。「よさこいを将来に残したい」との判断だろう。
 感染対策と社会経済活動を並行させるウィズコロナをこれから進めていく上で、よさこいは象徴的な存在でもあった。それが、中止しない要因になった面もある。
 開催反対が大きなうねりとなって表面化していないのは、よさこいが県民に浸透しているからだろう。だが、懸念の声を上げられない医療関係者らもいる。やる以上は、リスク低減の取り組みが着実に履行されなければならない。
 主催者側はさまざまな感染対策を講じるが、特別な手があるわけではなく、基本的なものが中心だ。参加チーム、踊り子、観客が各立場で徹底することが求められる。
 懸念されるのは、猛暑による熱中症だ。2年間の空白やコロナ下での練習不足などで踊り子の体力面を指摘する声もある。患者が出れば、医療にも負担がかかる。
 踊り子が無理をしない、チームが無理をさせないことが重要だ。コロナ下のよさこいを、より厳しい目で見る人もいる。特別演舞で、よさこいを巡る県民の溝が深まるようなことは避けなくてはならない。
 祭りの中止に関係者は苦しんだが、一方でよさこいへの思いも新たにしたことだろう。あって当然でなくなった。惰性でなく、主体的に関わる人が増えているという。
 それこそが、コロナ下でもよさこいをやる意義の一つだろう。開催すれば、何か得られるものもあるはずだ。それらを着実に次代につなげていきたい。

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