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2022.08.05 05:00

【米下院議長訪台】緊張回避へ意思疎通を

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 台湾海峡の緊張が高まっている。偶発的な衝突も危惧される状況だ。深刻な対立を適切にコントロールすることが求められる。危機管理システムを強化するために、意思疎通を重ねることが大切になる。
 アジア歴訪中のペロシ米下院議長が台湾を訪問した。蔡英文総統と会談し、米台の団結を表明した。現職下院議長の訪台は25年ぶりとなる。
 中国はこうした動きに強く反発し、台湾を取り囲む異例の大規模軍事演習で対抗している。挑発的な行動は慎まなければならない。
 対中強硬派のペロシ氏の訪台計画が報じられた際、バイデン米大統領は「軍はいい考えではないとみている」と述べ、否定的な考えを示していた。中国の習近平国家主席との会談が予定されていたことも、発言の背景にあったのかもしれない。
 その後、バイデン氏はペロシ氏の判断を尊重していると伝えられた。議会は独立した機関であり、訪台は政権が決めたことではないと印象づける思いがあったのだろう。政権は「一つの中国」政策を変更していないと、刺激を和らげる姿勢を示したことにも表れている。
 一方で、中国が対抗措置をちらつかせて挑発すればするだけ、訪台断念を働きかけにくくなっていったのも間違いないだろう。中国の脅しに屈した印象を与えれば、苦戦が予想される秋の中間選挙にさらに不利に働く恐れがある。
 習氏も秋ごろの共産党大会で続投を目指すだけに、台湾問題には強硬姿勢で臨む。先のバイデン氏との電話会談では、「火遊びは自らを焼き滅ぼす」と警告している。
 中国は台湾の武力統一の可能性も排除しない。中国軍は近年、台湾周辺での演習を増やして軍事的な圧力を加えている。中台の中間線を越えた台湾側への進入や、台湾防空識別圏への進入が相次いでいる。
 ペロシ氏の訪台に厳しい対抗措置を取る構えを見せている。台湾を取り囲むように周辺に6カ所の空・海域を設定して、7日まで大規模な軍事演習を行うと発表した。対象エリアには日本の排他的経済水域(EEZ)が含まれている。日本の安全保障に関わる問題でもあり、警戒を怠るわけにはいかない。
 米中が引くに引けない立場にあるだけに緊張は一段と高まりかねない。ただ、決定的な対立には至らないように一定の冷静さを維持したとする分析もある。ペロシ氏の専用機は中国側を刺激しないように迂回(うかい)コースを飛行した。習指導部も全面対決は避けたいのが本音とされる。
 双方にそれぞれの思惑があるならばなおさら、偶発的な事態を回避するためのシステム強化に力を入れることが必要だ。米中首脳がオンラインや電話ではなく、対面で会談することも重要になる。
 台湾海峡の平和と安定は日本の安保や世界の安定に重要だ。日本政府はこうした姿勢で、平和的な解決を促す意向を示している。それを実現するために関与の在り方を探ることが欠かせない。

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