2022.07.28 08:00
【旧統一教会】政治との関わり解明を
逮捕された山上徹也容疑者の母親は教団の信者で、計1億円以上を献金し、家庭が崩壊していた。山上容疑者は教団に恨みを持ち、安倍氏銃撃の動機を「旧統一教会とつながっていると思った」と語っている。
どのような理由があるにせよ、人命を奪う凶行は許されない。一方で、母親の多額献金が容疑者を追い込んだのも事実だ。旧統一教会を巡る問題を放置すべきではない。
旧統一教会は1980年代以降、信者の不安につけこんで美術品や宝石を高額で売る「霊感商法」が社会問題になった。その行為は民事だけでなく、刑事訴訟でも裁かれ、2009年に教団トップが辞任した。
しかし、以降も被害相談は続き、弁護士団体によると、同年以降の被害相談額は約175億円に上る。
信教の自由や宗教的行為の自由は憲法で保障され、宗教をよりどころにする人も多い。しかし、過度にのめり込ませて生活を崩壊させることの是非は、言うまでもあるまい。いわゆる「2世信者」の苦悩は容疑者に限ったものではないだろう。
こうした活動を続けてきた旧統一教会に、政治が関係を持ってきたことが明らかになりつつある。そもそも安倍氏が狙われたのも、教団の友好団体にビデオメッセージを寄せたことに起因していた。
教団と接点を持つ政治勢力は党派を問わないが、「反共産主義」「家族を中心とした伝統的な価値観」など、掲げる理念が近い自民党議員の事例の多さが際立つ。集会に参加したり、選挙で支援を受けたりした事実が日々、次々と浮上するような状況だ。その中には岸田内閣の閣僚3人も含まれる。教団の「賛同会員」なる参院議員もいた。
国会議員が教団の集会に参加したり祝辞を送ったりすれば、社会的信用につながる。それが献金被害を広げた可能性も否定できない。
国会議員側には、選挙に当たって教団から組織票や実務的な支援を得られるメリットがあったようだ。
だが、教団は過去に問題を起こしており、弁護士団体もその反社会性について政治家向けに警鐘を鳴らしていた。接点を持つことに躊躇(ちゅうちょ)するのが当然ではないか。
こうした中、焦点の一つになりそうなのが教団の名称変更だ。
文化庁は1990年代から認めてこなかった名称変更申請を2015年に一転、受理した。当時の文部科学相だった下村博文氏は関与を否定している。名称変更は、「統一教会」が持つ負の印象を薄めることになるだけに、誰がどう決定したのかは重要な問題だ。
自民党は教団との「組織的関与」を否定し、実態解明に否定的だ。立憲民主党、共産党などは解明に意欲を示すが、野党議員も教団と接点はあった。政治の信頼を保つためにも各党は事実を国民に示し、教団との関係を検証する必要がある。