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2022.07.27 08:00

【鉄道存廃協議】住民巻き込む議論を

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 利用実績が乏しい地方鉄道を巡って、存廃を含めた在り方を協議する新たなルールが示された。
 利用実績で一定条件を満たさない区間を対象に、国の主導で事業者と自治体の地域協議会を設けるよう、国土交通省の有識者検討会が提言した。協議会はバスへの転換などを検討し、3年以内に結論を出す。「廃線ありきではない」としている。
 国交省は2023年度から対象地域での協議入りを目指すという。
 提言の背景にあるのは、人口減少や新型コロナウイルス禍による利用低迷で、鉄道事業者の経営が悪化していることだ。
 JR四国や北海道はもともと、国鉄民営化当時から経営構造が厳しく、基金運用益など国の支援で成り立っているのが実情だ。
 一方、ドル箱路線や新幹線、不動産事業など収益力があるJR東日本、東海、西日本の大手各社も22年3月期まで2期連続赤字となった。都市部の収益で赤字ローカル線を支える構図が崩れつつあり、提言につながったとみられる。
 JR四国や北海道と大手には売上高で数十倍の開きがあり、経営条件が異なる中での一律的な扱いには違和感が残る。ただ、地方の反発も予想される中で出した提言は、取り巻く状況の深刻さを物語る。重く受け止めなければなるまい。
 提言は、国が協議の音頭を取る形とした。自治体側は廃線を提案されることを懸念し、鉄道会社との協議に消極的になることが多いためだ。
 一方、鉄道は地域の生活や観光に直結する。交通ネットワークの一部でもあり1区間、1地域のみで価値を測ることもできない。自治体が及び腰になるのもやむを得ない。
 今回示された条件でJR四国管内では、予土線の若井―北宇和島など4区間が該当した。
 現時点では協議会の参加が強制かどうか不明だが、義務でなければ、地元にとって参加の諾否が、まず大きな判断になる。地元の責任をどう果たすか問われる。
 予土線を巡っては、これまでも存廃論議が取りざたされ、県内の首長らは、国が国鉄民営化を進めた歴史から「路線維持は国の責任」と強調してきた。その主張を貫くのか、時代の変化に合わせて軟化させる余地があるのか、整理も必要だ。
 協議入りすれば、代替案でバス利用が挙がる。バスは運行コストが抑えられ、停車する場所、本数も増やすことができる。一方で所要時間がかかるなどの長短がある。
 情緒や歴史、地域の誇りなども含めて「鉄道」にこだわるのか。実務的な移動手段があれば構わないのか。それらを考える前提として、地域がどうありたいのか、負担はどこまでできるのかといった議論が重要だ。「拙速な結論」と言われないためには、住民を巻き込み、納得するまで話し合う作業が欠かせない。
 今回の提言は第三セクター鉄道は対象外とした。総じてJRより経営環境が厳しい三セク鉄道の在り方も同時に考えていく必要がある。

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