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2022.07.18 05:00

【英首相辞任へ】信頼失墜が迫った退場

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 国民の信頼が政治の基盤であることを見せつけているようだ。政治家が自身の責任と向き合うのは当然であり、そのように仕向ける世論の力を感じさせる。
 ジョンソン英首相(与党保守党)が辞任を表明した。
 新型コロナウイルスの流行中に、首相官邸などでパーティーを開いていた疑惑が先に発覚していた。ロックダウン(都市封鎖)で国民の行動を厳しく規制していた時期だけに反発は大きく、虚偽の答弁をしたことで信頼は大きく揺らいでいた。
 さらに、性的スキャンダルで辞任した党幹部の任命を巡り、経緯の説明を二転三転させ、不誠実な対応に批判が強まった。
 このため保守党内で不信感と辞任論が高まった。保健相、財務相ら主要閣僚を含む政権幹部が辞任する事態となった。相次ぐ離反で求心力を急速に失ったことで政権運営が困難な状況となり、辞任の流れができてしまった。
 国民の責任追及を求める意見に閣僚らが反応し、続投に意欲を見せていたジョンソン氏を追い詰めた。辞任した閣僚や政権幹部は50人以上となった。そうした行動を世論が後押ししたと言える。
 言うまでもなく問題はジョンソン氏の姿勢にある。閣僚らは、それぞれが党勢や自身への今後の影響をにらんで行動したのだろうが、何より国民の怒りや失望の大きさを敏感に感じ取っていたはずだ。
 ジョンソン氏は2019年7月に首相に就任した。長期にわたって迷走が繰り返されていた欧州連合(EU)からの離脱を実現させた。強力な指導力と気取らないたたずまいで人気がある一方で、強引な手法や尊大な態度が批判され、当初から誠実さや信頼性の不足が指摘されていた。今回も不祥事と真摯(しんし)に向き合わなかったことで国民の強い不信を招いてしまった。
 英国は、ロシアに侵攻されたウクライナへの軍事支援や対ロ制裁を行い、国際社会が反ロシアで結束するよう働き掛けてきた。ジョンソン氏辞任で英国の対ロ政策が大きく変更されるとは想像しにくい。とはいえ、内政の混乱が日米欧の対ロ連携を緩めないように警戒が必要だ。
 EUの有力加盟国であるフランス、ドイツとも政権の足元は盤石とは言い難い。ロシアはエネルギーや穀物で揺さぶり、物価高は政権への不満をさらに高めかねない。同盟の安定性への影響が危惧されるだけに、結束維持が重要となる。
 英国の焦点はジョンソン氏の後継争いに移った。8人が届け出た党首選は、候補者を絞り込む投票が重ねられている。9月に次期首相となる新党首が決まる予定だ。国民の信頼回復を急がなければならない。
 今回の事案は英国の不祥事と政治的混乱ではある。ただ、政治家の任命責任や、疑惑の説明責任を曖昧にしたままやり過ごそうとする姿勢とは一線を画していることは注目したい。こうした対応には学ぶことがあるように思える。

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