2022.07.16 08:40
高知・幡多の海にオトヒメクラゲ 黒潮生物研が新属発見
オトヒメクラゲ(黒潮生物研究所提供)
ウラシマクラゲ科の新属発見は106年ぶり。新種は和名「オトヒメクラゲ」と命名された。
同研究所の戸篠祥・主任研究員(35)によると、一般的なウラシマクラゲは、沖縄を除く日本沿岸に広く生息。2、3センチほどのかさと、捕食などに使う触手、胃から養分を送る放射管を各4本持つ。
オトヒメクラゲも形態は似ているものの、かさは1センチほどと一回り小さく、触手や放射管はそれぞれ8本ある。また、触手の付け根部分からかさの表面に沿って筋状に伸びる10~20マイクロメートルほどの刺胞(毒針)が列状に並んでいた。
生物の分類では、似た種の集まりを属、属の集まりを科としており、ウラシマクラゲ科はワタボウシクラゲ属など3属とされてきた。しかし、戸篠さんがDNA解析したオトヒメクラゲは、いずれの属にも当てはまらず、1916年以来の新属発見となった。
正体不明のクラゲの存在は2008年ごろから研究者の間でささやかれていた。15年に神奈川県で見つかってから、クラゲ類の分類学者である戸篠さんが主導し、新江ノ島水族館(神奈川)、アクアワールド茨城県大洗水族館(茨城)の飼育員との3人で本格的な調査に乗り出していた。
チームは昨年までに計16個体の標本を採集し、本県でも土佐清水市の下ノ加江港で戸篠さんが発見。「本県西南部は黒潮の暖流と瀬戸内海の寒流がぶつかり、多種多様なクラゲを観察できる国内有数の場所」とする。
今回を含め6種の新種クラゲを見つけ、現在も新種と思われるクラゲを調査中の戸篠さん。オトヒメクラゲの繁殖実験も進めているといい「生態の解明につなげ、今後の研究に弾みをつけたい」と話していた。(坂本出)