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2022.07.06 08:40

繁藤災害50年 大崩落の痕跡今も 川底に鉄道レール

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大規模な土砂崩れが発生した繁藤災害(1972年7月5日午後、香美市土佐山田町繁藤)

大規模な土砂崩れが発生した繁藤災害(1972年7月5日午後、香美市土佐山田町繁藤)

 集中豪雨による土砂崩れで60人が犠牲になった「繁藤災害」から5日で50年。大崩落した山腹にはくっきりと痕跡が残り、押し流された鉄道のレールは川に沈んだまま。あの惨禍を伝え継ぎ、もう二度と繰り返してはならない―。この日も雨に見舞われた繁藤で、遺族らは改めて誓った。

現在の災害現場周辺。大崩落した箇所は山がくぼみ、木々はまだ若々しい(佐藤邦昭撮影)

現在の災害現場周辺。大崩落した箇所は山がくぼみ、木々はまだ若々しい(佐藤邦昭撮影)

 JR繁藤駅の北側にある追廻山(おいまわしやま)を上空から見ると、全体の深い緑とは植生が異なる、ややくぼんだ場所がある。1972年7月5日、10万立方メートルもの土砂がここから崩れ落ち、国道や線路、列車、そして人々をのみ込んだ。

 地区に設置されていた高知地方気象台天坪(あまつぼ)観測所は、7月4日午後2~4時の間に1時間80ミリを超える猛烈な雨を観測。雨脚はいったん落ち着き、5日早朝に再び強まった。

 午前4時台62ミリ、5時台95・5ミリ、6時台95ミリ―。当時を知る遺族の一人は「雨が重たかった」と形容する。そんな土砂降りが続いた午前6時45分の崩落で、避難を手伝っていた消防団員1人が巻き込まれた。

 その後も何度か崩落が起こる中、団員や住民は慎重に救出作業を続行。しかし10時55分、高さ80メートル、幅140~170メートルというとてつもない規模で山が崩れ、60人もの命を一瞬で奪った。

 4日午前9時からの24時間で記録された観測所の雨量は742ミリ。7月降水量の平年値500・8ミリの1・5倍もの雨が1日で降り注いだことになる。地区に地域気象観測システム(アメダス)が設置された76年以降の24時間記録は「高知豪雨」の98年9月24日に観測された735ミリ。それをも上回る豪雨が大崩落を引き起こした。

土砂で押し流され、今も現場近くの穴内川に沈む鉄道のレール(香美市土佐山田町角茂谷=佐藤邦昭撮影)

土砂で押し流され、今も現場近くの穴内川に沈む鉄道のレール(香美市土佐山田町角茂谷=佐藤邦昭撮影)

 崩れた土砂は鉄路を襲い、列車も押し流した。レール片は今も、土讃線沿いを流れる穴内川の底に眠っている。

 長い歳月を経て、今はよほど目を凝らさないと気付かなくなっているが、それでも遺族や住民はその存在を忘れていない。豪雨の猛威を示す、物言わぬ語り部として。(海路佳孝)

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