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2022.07.04 08:35

全国に導き世界広げる 高知中高女子サッカー部コーチ 沢田明希さん(22)高知市―ただ今修業中

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高知中学高校の女子サッカー部のコーチを務める沢田明希さん=左。後輩を全国大会へ連れて行くことが大きな目標だ(高知市北端町の高知学園グラウンド)

高知中学高校の女子サッカー部のコーチを務める沢田明希さん=左。後輩を全国大会へ連れて行くことが大きな目標だ(高知市北端町の高知学園グラウンド)


 「世界の鐘」が終業を告げると、高知中学・高校はにわかに活気づく。そのざわめきの中、「明希さーん!」「こんにちは!」と女子サッカー部員の元気な声が響いた。手を振って応えつつ、「どんなに遠くからでも、姿を見つけると声を掛けてくれる」。うれしそうに笑いながら、「あの子たちを絶対全国に連れて行きたいんです」。語るまなざしは強くて熱い。

 ◆

 小学校高学年からサッカーを始めたが、メインは陸上。全国大会も出場した。中学でも陸上をするつもりが目指した学校への進学がかなわず、兄も通った高知中へ。当時の陸上部は休眠状態で、情熱の矛先はサッカーへ向いた。所属していた地域のクラブチームは基礎ばかりで、「本気でやりたいのに」ともやもや。そんな時、高知中高に女子サッカー部ができる、とのうわさを聞いた。「絶対入る」。高校2年の2016年、創設された同部の初代主将となった。

 「キャプテンマークを腕に巻きたい」。買って出たまとめ役は、中学生10人を高校生3人で率いる苦労の連続。不満が爆発し、「もう顔も見たくない。辞める」と一時は決心した。

 「後輩を少しでも変えてから辞めよう」。そう考えて向き合うと、気付きがあった。それまでは言いたいことを一方的に伝えるばかりで、「うまくいかないのを人のせいにしていた。自分だけが経験を積めればいいって」。一人で強くなるんじゃない。「学園というチームで強くなりたい」と初めて思えた。

 この時立てた誓いは、今も体の真ん中を貫いている。「人のせいにしない」「まずは自分に原因がないか考えてみる」。ミスが出ても「私も悪いところがあったね。ごめん」と言えるようになり、後輩もまねしてくれた。いつしか、劣勢でも「勝てる」と信じ合えるチームに成長。今に通ずる同部の礎を築くと、次のステージには新しい世界が待っていた。

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 女子サッカーの強豪、静岡産業大学に進学。技術もフィジカルも「サッカー脳」も、全てがレベル違い。サッカーのことを考えすぎて毎日頭痛がした。自慢のスピードの生かし方を追求して出場機会を得ると、インカレも経験した。さらなる活躍を目指した4年生の21年秋、右膝の靱帯(じんたい)を切った。卒業後の進路に声を掛けてくれるチームもあったが、高校でも左膝の靱帯を切っており「繰り返すかもしれない」。弱気になっていた時、母校から声が掛かった。

 指導者として見るサッカーは新鮮だった。初めは「自分だったら」で教えてしまい、「エゴイストな部分が出てしまった」と反省。その選手ならどんなことができるかを見るようになり、「前の自分より考え方が広がった」との手応えもある。

好きな言葉

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 選手への復帰を考えながらも、6月の四国選手権で香川西高に敗れてインターハイ出場が絶たれたことで、「私の100%の力を懸けて、冬の選手権は全国へ連れて行きたい」と決意した。それは、出会ったことがないほど上手な選手が群雄割拠する全国大会で、「自分にもできることがある」と知った瞬間、世界が大きく広がったから。

 「学園の子たちにもその世界を見せてあげたい。今はこの子たちが、心の底から喜ぶ姿が見たいんです」

 写真・反田浩昭
  文・平野愛弓

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