2022.06.30 08:00
【G7サミット】制裁強化へ試される結束
先進7カ国首脳会議(G7サミット)は首脳声明を採択し、ロシアに厳しい経済的代償を科し続け、制裁と圧力を強化する姿勢を打ち出した。ロシアから輸入する石油の取引価格に上限の設定を検討する。
だが、制裁の打撃は決定的とは言い難く、手詰まり感も漂う。G7サミット開催中にはロシアによるミサイル攻撃が拡大したようだ。ショッピングセンターにも撃ち込まれ、大勢の市民が犠牲になったと伝えられる。ウクライナは武器や資金の提供を受けながら対抗してきたが、戦闘は長期化が指摘される。
そうした中で、食料危機の懸念が強まってきた。侵攻の影響で、穀物輸出ルートを遮断されていることが影響している。新型コロナウイルス禍からの回復に伴う需要増は、一方で途上国などでの飢餓と栄養不良の危機を悪化させている。
今会合にはインドやアフリカ連合(AU)の議長国セネガルなど、ロシアと一定の関係を保つ国の首脳を招いた。民主主義国の連携と専制主義への対抗を確認したことは成果となる。さらに、食料危機への対応で途上国などとの関係強化を強く訴えることももくろんだはずだ。
G7の食料安保に関する声明は、食料価格の前例のない高騰や貿易の混乱はロシアに重大な責任があると強調した。また、弱い立場の人々を守るために追加拠出を表明した。
ロシアが、米欧の制裁が流通停止の原因だと批判することへの対抗だ。セネガルのサル大統領は先のロシアのプーチン大統領との会談で、対ロ制裁がアフリカの食料の安定を脅かしているとの認識を示した。G7として打ち消さないと混乱を大きくしかねないという判断だろう。
ウクライナからの穀物輸出は急務だ。声明は、ロシアに対して無条件で黒海封鎖をやめるよう改めて求めた。また、黒海を通る安全な海の回廊実現へ国連の取り組みへの支持を表明した。ロシアの食料や肥料輸出の正常化を含め、国連の役割は一段と大きくなっている。
対ロ制裁に伴うエネルギーや食料価格の高騰はG7各国にものしかかる。ロシアへの依存度合いの濃淡もあり、G7内でも受け止めに食い違いが指摘されるようになってきた。制裁疲れ、支援疲れという言葉も聞かれる。各国内での支持獲得とともに、G7の結束が試されている。
中国へのけん制も強めた。首脳宣言は、ロシアに友好姿勢を続け、制裁に反対する中国に、無条件での撤退をロシアに求めるよう要求した。また東・南シナ海での活動を懸念し、中国と台湾の両岸問題の平和的解決や人権状況の改善も求めた。
中ロは戦略的な関係を深化させる方向だ。覇権主義的な動きを強めさせてはならない。