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2022.07.01 08:40

牧野博士が手紙で「大至急」、出版社宛てに催促 高知県佐川町・青山文庫学芸員が98点精査、9月まで一部展示

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牧野富太郎博士の出版社宛ての手紙が並ぶ企画展(佐川町甲の青山文庫)

牧野富太郎博士の出版社宛ての手紙が並ぶ企画展(佐川町甲の青山文庫)


 高岡郡佐川町出身の植物学者、牧野富太郎博士が晩年に出版社へと送った手紙98点を、同町の青山文庫学芸員が精査、分類し、一部を同文庫で展示している。自身の本の校正刷りや必要な物品を大至急持ってきてほしいと何度も催促するなど、手紙から牧野博士の仕事への情熱や人柄が浮かび上がってくる。

スクラップブックを催促する手紙。「大至急」の文字の横に丸を書いて強調している

スクラップブックを催促する手紙。「大至急」の文字の横に丸を書いて強調している

  今回調査した手紙は、同町が所有する牧野博士直筆の手紙約210点のうち、東京都の出版社「北隆館」宛てに送った98点。差し出し年不明の4点を除き、1951~54年、博士が89~92歳のときに書いたもので、学芸員の藤田有紀さん(48)が分析した。

 北隆館は牧野博士の植物研究の集大成「牧野日本植物図鑑」などを発行。今回の手紙はほぼ全てはがきに〈校正刷を大に御急がせ下され〉〈図鑑へ入るべき図が大分出来ましたから取りに御出で下さい〉といった、同社宛ての短い業務連絡が書かれている。

 校正刷りのほか用紙やペン、スクラップブックといった仕事道具、コーヒーや白ワインなど個人的な嗜好(しこう)品までを催促する内容が多い。

 手紙にはせかす表現が多用され、〈大至急〉の文字の横に丸や赤線を書いて強調しているものも。原稿用紙がなくなれば〈至急に御廻し下さい、筆を止めて居ります〉と懇願。何度もスクラップブックを頼んだのに届かないときは〈貴館の緩慢なのは洵(まこと)に残念に存じます〉〈もつと馬力を御かけ下さい〉と苦言を記している。

 同じ日に違う内容を何枚も書いている場合もあり、藤田さんは「現代のメールやLINE(ライン)を送る感覚で、思い付いたことをすぐに書いていたのでは」と推測する。

 北隆館宛ての手紙98点のうち38点を、青山文庫で9月4日まで開催している企画展「牧野富太郎と佐川」(前期)で展示(月曜休館)。全ての手紙や解説を掲載した図録(千円)も販売している。藤田さんは「牧野博士の生の声が手紙から伝わってくる。等身大の姿を知ってほしい」と話している。(楠瀬健太)

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