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2022.06.27 05:00

【2022参院選 経済政策】構造的な問題に向き合え

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 新型コロナウイルス禍からの経済活動再開の動きや急激な円安による物価高は、日本経済の需要の弱さを改めて浮き彫りにした。
 当面、家計や企業の負担軽減策が景気の鍵を握るが、デフレ経済から引きずる構造的な課題にどう取り組んでいくかは、日本経済の今後を左右することになろう。
 日本の金融・経済政策は2012年の第2次安倍政権発足以来、いわゆる「アベノミクス」の延長線上にある。アベノミクスを含めたこの四半世紀、日本の実質賃金は伸び悩んでいる。
 日本経済の異常な現状は、経済協力開発機構(OECD)加盟国の経済指標をみれば一目瞭然だろう。欧米各国では同時期、着実に実質賃金が増え続けている。コロナ禍からの回復局面でみせる旺盛な消費には、賃上げの確かな裏付けがある。
 それとは逆に、賃上げが伴わない日本で消費が盛り上がらないのは当然といえる。需要が乏しければ企業の業績は振るわず、労働者の賃金も上がらない。この「悪い物価上昇」の悪循環を断ち切らなければ、自律的な成長など望めまい。
 アベノミクスは大規模な金融緩和と財政出動、成長戦略の三本の矢をうたったものの、効果は金融緩和による「一本足打法」だったとする見方も根強い。
 大企業や富裕層が潤えば、その富が中小企業や低所得者にも行き渡るという「トリクルダウン」は実感できず、国際競争力を取り戻すための構造改革も掛け声倒れに終わった感が否めない。新自由主義的な政策により、所得格差はむしろ拡大したと指摘される。
 岸田文雄首相はそうした状況を踏まえ、昨秋の所信表明演説で「成長と分配の好循環」を訴え、格差是正や中間層拡大への意欲を示した。
 しかし、6月上旬にまとまった経済財政運営の指針「骨太方針」と、その中核となる経済政策「新しい資本主義」実行計画では、分配の色はすっかりかすんで、従来の成長路線を鮮明にした。
 人材育成や新興企業支援など方針の柱に加え、家計の投資促進といった政策も既視感が漂う。大規模な金融緩和など三本の矢も継続するとしており、アベノミクスの延長とみてよい。
 これに対し、野党各党は金融緩和の見直しのほか、消費税減税や社会保険料の減免、原油や小麦の価格上昇抑制などを主張する。財政出動による家計や企業活動の負担軽減が必要な場面なのは確かだが、いつまでも財政出動によるカンフル剤に頼ってはいられない。
 長期にわたる日本経済の停滞と地盤沈下は、構造的な問題の解決を先送りし続けた結果とみることもできる。国際競争のなかで、日本経済はこれからどう稼ぎ、暮らしや将来に対する国民の不安を解消していくのか。未来を見据えた議論が求められる。

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