2022.06.27 08:40
四万十産若アユを銀座フレンチ店提供 県外販路拡大のきっかけに
有名フランス料理店で提供されている四万十川のアユ料理(東京・銀座)
県内で取れるアユの多くは自家消費に回され、飲食店などへの出荷は1、2割ほどで、経済的には「未利用」に近かった。県はアユの価値向上を目指し、3月に振興ビジョンを策定。柱の一つに「外商強化」を掲げていた。
6月1日のアユ漁解禁に合わせ、提供を始めたのは「ブラッスリー ポール・ボキューズ銀座」。フランスの本店は半世紀以上もガイドブックで三つ星を獲得していた名店で、オーナーシェフだった故ボキューズ氏は世界的シェフとして知られる。
店では、コース料理(6600円)の前菜に「高知県四万十川に流れる天然鮎のフリット」を提供。四万十産の15~18センチの若アユの中骨を抜いてからっと揚げ、頭や尻尾も食べられる。ワタを残して調理し、煮込んだナスやズッキーニなどの夏野菜と合わせることで部位ごとの味や食感の違いが楽しめる。
皿には、アユが泳ぐ〝川〟として、バジルと春菊、ニンニクを使った緑色のソースが流れ、躍動感ある一品に仕上がった。料理長の星野晃彦さん(38)は「香りは繊細、身はふっくらで色が美しい。可能性がすごくあり、お客さんの反応も上々です」。7月末まで提供する予定という。
東京都中央卸売市場によると、2020年に取り扱った全国のアユは約600トンで、天然物は約1トン。本県産はそのうち735キロと最多だった。
県はさらに本県産の天然アユを首都圏で売り込み、観光客誘致につなげたい考え。県水産業振興課は「県民にアユの価値を知ってもらい、複合的な取り組みで振興させたい」としている。(浜崎達朗)