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2022.06.25 05:00

【核禁止会議閉幕】新たな潮流に応じよ

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 オーストリアの首都ウィーンで開かれていた核兵器禁止条約の第1回締約国会議が、「核なき世界」への即時行動などを求める「ウィーン宣言」を採択して閉幕した。
 核を非人道兵器とし、全面的に違法化した初の国際法規として、国連が条約を採択して5年。会議には、批准国を中心に80カ国以上が集まって3日間議論し、宣言では「地球上から核兵器が完全になくなるまで、われわれが休むことはない」と不退転の決意を世界に示した。
 核軍縮に向けた歴史的な動きであり、ウクライナに侵攻するロシアが核による威嚇を打ち出す中、その重みは一層増す。ウィーン宣言を土台として国際社会は非核への道筋を探っていかなければいけない。
 会議の開催に当たっては、条約に加わっていない核保有国、また「核の傘」の下にある国々との関係が大きな焦点の一つになった。
 核禁止条約は、大国に核保有を認めて軍縮を課す核拡散防止条約(NPT)の停滞を受け、非保有国が主導した経緯がある。核抑止に基づいた安全保障を前提にする大国側は、核禁止条約に反発し、「核の傘」に頼る北大西洋条約機構(NATO)加盟国や日本も参加していない。
 核禁止条約には、実効性という点で課題があることは否めない。
 しかし今回の会議には、ドイツやオランダなどNATO加盟の4カ国やオーストラリアがオブザーバー参加。核禁止条約への道義的支持を表明したり、締約国との対話の重要性に言及したりした。
 締約国側も、核保有国などの軍縮の不十分さを指摘する一方、行動計画では、目的達成へ「NPTとは補完し合う関係」と強調し、対立解消を図る方針を明記した。
 核軍縮の取り組みは、新しい段階に入りつつある。核禁止条約とNPTの二つの枠組みを効果的に組み合わせて成果を上げることが重要だ。そして、その中で鍵を握るのは日本にほかなるまい。
 日本は唯一の戦争被爆国として、他国が持ち得ない発言力があり、同時に責任がある。
 締約国会議には広島、長崎両市長や被爆者代表らが出席したが、政府は「核保有国の関与がなければ軍縮は進まない」との立場を貫き、オブザーバー参加もしなかった。
 核保有国と非保有国の分断がある中、「橋渡し役」が求められているのに果たそうとしない姿勢に、非保有国が失望し、被爆者が批判するのも当然だろう。
 岸田文雄首相は締約国会議のさなかの21日、米国で8月に開かれるNPT再検討会議への出席を表明した。5年に1度、核軍縮の取り組みを検証する場であり、日本の首相の出席は初めてになる。核軍縮の意欲はあるが、その舞台はNPTのみだということなのだろうか。
 締約国会議が「NPTとの相互補完」を打ち出し、NATO加盟国も会議に参加した。潮流は変わりつつある。政府はもう一度、日本が果たすべき責任を自問するべきだ。

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