2022.06.24 08:36
高知県体開幕直前、感染に涙...「努力は無駄じゃない」出場辞退の選手 前向く
県体で勝つため、鍛え上げた腕。強く握り締めながら、選手は前を向いた
中学で全国大会出場を逃し、「高校では必ず全国に行く」と誓った。入学はコロナ禍1年目の2020年。インターハイがなくなり、県体も一部の競技が開催されなかった。「当時の3年生は悔しい思いをした。その思いも背負って取り組んできた」
部の全体練習後は個人的に筋力トレーニングを欠かさず、自宅に帰ってからも鍛える練習漬けの日々。そして迎えた最後の県体は「何とか優勝したい」。そう心に決めていた。
ところが、開幕が5日後に迫った5月16日に体調の異変を感じた。自宅での抗原検査の結果は陽性。「自分の競技人生は終わった」。泣きながら電話で顧問に報告した。その夜はいろんな思いが巡って眠れなかった。
翌日のPCR検査も陽性だった。「3年間積み上げたものを発揮する最後の舞台がこういう形で終わるなんて」。ストレスと悔しさのせいか、体中にじんましんが出た。
大会中、ホテルで隔離生活を送りながら、「自分が出られない分、チームメートに頑張ってほしい」と願ったが、心は晴れない。その後、別の大会に出場できると聞き、「ようやく、ほっとした」。気持ちを切り替えることができた。
どれほど対策を徹底しても誰もが感染し得るコロナ。「『絶対かかりたくない』と思っていた。不運でしかない」。それでも、「自分が積み重ねてきた努力は無駄じゃない」と前を向く。
「これから先の人生で悔しい思いをするかもしれない。その時もたぶん、頑張れる」(五十嵐隆浩)