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2022.06.22 08:00

【参院選公示】物言う機会に権利行使を

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 参院選がきょう公示され、7月10日の投開票に向け選挙戦が始まる。
 ロシアによるウクライナ侵攻で国際秩序が揺らぎ、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行で「日常」が遠のいて久しい。これらを原因とする物価高騰は、家計や企業に重くのしかかっている。
 昨年10月に就任した岸田文雄首相は「疑似政権交代」効果もあり、直後の衆院選で自民党を絶対安定多数の確保に導いた。今回の参院選は、政権運営が本格的に評価される初めての選挙になる。
 ウクライナ情勢は、厳しさを増す東アジアの安全保障環境への向き合い方を揺るがしている。岸田首相は5月、バイデン米大統領に「防衛費の相当な増額を確保する」と述べ、防衛力の抜本強化を約束した。ただその内容や財源は曖昧なままだ。
 政府は、相手領域内でミサイル発射を阻止する敵基地攻撃能力の保有も本格検討する。与野党を問わず、防衛政策の基本方針である「専守防衛」の見直し論も浮上している。
 戦後日本が憲法9条の下で貫いてきた平和主義は岐路にあるといってよい。その半面、危機への便乗という警戒感も広がる。国の針路と理念に対する有権者の判断が問われる。
 物価上昇は、エネルギー資源価格や原材料費、輸送費などの生産コスト増に起因する。コロナ禍にウクライナ危機が追い打ちをかけ、二十数年ぶりの円安水準が輸入価格を押し上げる。
 岸田首相はきのう、「物価・賃金・生活総合対策本部」の初会合を開いた。電気料金や輸入小麦、飼料や肥料などの価格上昇を抑える措置を講ずるようだ。
 とはいえ政府の物価高対策への視線は厳しい。共同通信の今月の世論調査では、首相の対応を「評価しない」とする回答が約64%を占めた。
 生活防衛の策としては、賃金上昇や課税のあり方なども挙げられよう。しかし、岸田政権下で初の「骨太方針」では首相は成長と並べて唱えてきた分配政策に踏み込んでおらず、具体像は見えてこない。
 野党も物価高に照準を合わせ、「岸田インフレ」と批判を強めている。生活に直結する政策だけに各党各候補の主張に耳を傾けたい。
 通常国会では、野党のあり方も問われた。「批判ばかりだ」という批判を意識した立憲民主党は政策提案型路線にかじを切ったが、ほとんど存在感を示せなかった。最終盤の岸田内閣不信任決議案も野党間の足並みはそろわなかった。
 政権監視という役割を十分に果たせなかった結果が、桜を見る会や日本学術会議の会員任命拒否といった安倍、菅両政権の「負の遺産」に対する追及不足ではなかったか。選挙戦を経て野党勢力がどう変わるかも注目される。
 岸田政権が参院選を乗り切れば、衆院を解散しない限り次の参院選まで大きな国政選挙がない「黄金の3年」を手にする。有権者は物言う機会を無駄にせず、権利を行使して政治をコントロールしたい。

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