2022.06.23 08:40
子どもが海に落ちた!救助法、ライフジャケット膨脹 高知海保協力、体験リポート―魚信 はっぴぃ魚ッチ
「密」を避けて釣りに行こう―。新型コロナ下で、堤防などに子どもを連れて行く機会が増えた方が多いのではないでしょうか。本紙「魚信」編集部は、子どもが転落してしまった場合に、どんな行動を取るべきか検証しました。高知海上保安部の全面協力を得て、安全を確保しながら記者が実際に落ちて指導してもらいました。
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海に落ちた子どもの父親役は、高知海保・警備救難課の和田賢治さん。
「まず大前提は子どもも大人も体に合ったライフジャケットを着けていること。そして釣り場では転落時に上れるはしごや階段、スロープの有無を確認しましょう。つまずきそうな障害物にも注意が必要です」
それでは検証スタート。子ども役の記者が海へドボーン!
ここで大事なのは、子どもを追いかけて親が飛び込まないこと。ライフジャケットなしで飛び込めば親子とも非常に危険です。
できることは、「118番」への救助要請と、子どもが風や潮流で流されないようにすること。
この日は釣り場にあるもので試しました。
和田さんが手に取ったのは、長く伸ばせる「たも網の柄」。
「最適な道具ではありませんが、他になければ使えます。しならせると折れるので、まっすぐに使ってください」。子どもに向かって差し出し、つかんでもらいます。
次に、ロープが付いた水くみバケツ。堤防釣りでは持っている人も多いでしょう。
こつは少し水を入れること。その重みを生かし、落水した子どもの奥に投げ入れてロープを届けます。
もし、ロープがあればクーラーボックスに結んで投げ入れてもいいそうです。子どもにぶつけないように注意を。クーラーボックスは浮力があるので、子どもがつかまると安心感が増します。記者はライフジャケットを外しても海面に浮かぶことができました。
今回は高知海保の潜水士さんや救難艇が待機してくれ、安心して検証ができました。でも、実際に釣りをしていて海に落ちたら、誰でもびっくりしますよね。その際、無理に岸壁を上ろうとするのも危険です。
海面から間近に見た壁面には貝殻がびっしり。手袋もなく上ろうとすれば、手や体を切ってしまうのは間違いありません。やはり、ロープなどで流されないようにして、救助を待つのがいいとのことです。
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膨脹式のライフジャケットも、試してみました。
「腰巻き型」と「首掛け型」の2種類。どちらも平時はコンパクトに畳まれ、落水すると圧縮ガスで浮輪を膨らませます。体を動かしやすいのが利点ですが、実際に膨らませたことがない人も多いのでは?
まずは、腰巻き型を腹にしっかり締め込んで海にドボン。「ブシューッ」と、すぐに膨らみました。
ところが、浮輪が腰の後ろで膨らんでしまい、うつぶせの姿勢になってしまいました。頑張って水をかかないと、顔が水に漬かってしまいます。
もがいていると、すぐに潜水士さんが寄ってきてくれ、浮輪が脇の下に来るよう整えてくれました。
こうすると安定感があります。投げ入れてもらったロープなどにつかまることもできそうです。
「首掛け型」も試してみました。記者が昨秋購入したばかりですが、落水後、しばらく開きませんでした。
「あれ?」。巡視船のはしごに上がり、少し動かすとブシュー。しかし半分ほど膨らむと、止まってしまいました。こういうこともあるんですね。
和田さんは「開かないこともあります」と説明してくれました。「その場合、落ち着いて手動のひもを引いてください」
2度目は、首の回りで膨らんだ浮輪を体に合うよう整えてもらって海に浮かびます。
ここで気付いたことが一つ。首掛け式は、顔と海面の距離が近いのです。
「これ、波があったらかぶりそう」
記者がそうつぶやくと、頭上で声が掛かりました。
「波、要ります?」
へ? 波? 困惑していると、沖で待機していた救難艇がうなりを上げて8の字に走りだしました。これによって次々と波が生まれ押し寄せてきます。体がぶわっと持ち上げられ、岸壁に跳ね返った波が、複雑な形になり顔面にせり上がってきました。
「うっぷ。おえ~」
高知海保の「大サービス」もあり、貴重な体験ができました。
正直に言うと、2種類を試すまでは「首掛け型の方が安全そう」と思っていました。
しかし、形をしっかり整えることができれば、腰巻き型の方が安心感がありました。
大事なのは、どのタイプを使うにせよ、1度膨らませて、浮かんで点検すること。膨脹用ボンベは千~2千円台で売っています。
釣具屋さんで買うときには、ライフジャケットを持参してボンベの種類を見てもらいましょう。交換のやり方が分からなければ、店員さんがやってくれるし、浮輪を畳んで収めてくれますよ。
それから、小さな子どもには、膨脹式でなく、固形の浮力体が入ったライフジャケットがいいと感じました。
今年も夏はすぐそこです。海や川で、しっかりとライフジャケットを身につけ、事故のないように釣りを楽しみましょう。(魚信編集部)