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2022.06.21 08:00

【WTO合意】多国間協調を高めたい

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 自由貿易の番人が、決められない組織とやゆされては存在意義に関わる。今回の合意形成を、課題である紛争処理など組織の機能回復と改革につなげることが重要だ。
 世界貿易機関(WTO)の最高意思決定機関である閣僚会議は「閣僚宣言」を6年半ぶりに採択した。
 近年は先進国と途上国との利害の対立から意思決定が停滞している。宣言採択には原則として全加盟国・地域の合意が必要となる。前回は不満を募らせたトランプ米政権などが反対して採択できなかった。
 ロシアによるウクライナ侵攻はWTO内でも分断と対立を鮮明にした。ウクライナへの連帯を示す有志国・地域の共同声明に名を連ねたのは3分の1程度にとどまった。一方、ロシア高官の発言時には一部代表団の退席も見られた。認識の相違は相当大きい。
 こうした中で、懸念が高まる食料危機対応で合意したことは前進である。農産物や肥料、燃料が高騰し、食料安全保障に影響していることに懸念を表明した。
 自国内での消費を優先して、食料の輸出規制を導入する国が続出している。宣言は、WTOルールに則していない輸出規制を実施しないことを確認した。また、国内に余剰備蓄がある場合は国際市場に放出することを盛り込んだ。
 貿易が食料安全保障の改善に重要な役割を果たすとの見方にロシアも賛同している。食料危機を防ぐには戦闘の停止が最優先のはずだ。
 機能不全の象徴とされ、20年以上議論が続いてきた漁業補助金問題も進展があった。水産資源の乱獲を助長していると批判される漁業補助金の在り方に部分的に合意した。
 乱獲状態にある水産資源の漁業に対する補助金は禁止する一方、資源管理によって回復を促している場合は補助金を認める内容だ。議論を一部先送りした分野もあるが、包括的な合意を目指すことになった。
 新型コロナウイルスのワクチン特許使用についても途上国が利用しやすくする。こうした協調を積み上げていくことが大切になる。
 2001年に始まったWTOの新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)は頓挫した。経済のブロック化志向が進み、連携を強める動きは2国間や地域の協定に移っている。
 WTO設立の背景には、保護主義の台頭が第2次大戦につながった反省がある。貿易紛争を平和的に解決するルールや仕組みを模索し続ける姿勢が欠かせない。
 紛争処理機関を巡る問題は引き続き残っている。加盟国間の争いは二審制の処理手続きで解決するが、最終審に当たる上級委員会が米国の反対で任期切れ委員を補充できないため機能停止している。
 十分に機能する紛争処理制度を24年までに実現できるよう協議する。対立は回避しても改革は簡単ではない。先送りばかりではさらなる機能低下を印象づけかねない。実効性のある多国間協調の枠組みへ向け、積極的な取り組みが求められる。

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