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2022.06.20 08:38

憧れのキャプテンに 建設会社現場監督 小松正季さん(26)高知市―ただ今修業中

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「ステップアップの年にしたい」と話す小松正季さん(高知市朝倉甲)

「ステップアップの年にしたい」と話す小松正季さん(高知市朝倉甲)


 高知市内の住宅街の一画。防じんシートに囲まれた中で、6階建ての高齢者向け集合住宅の建設が進んでいる。工事車両の搬入口に、携帯電話を手にした白いヘルメット姿の若者が1人。生コン業者とやりとりしては、ミキサー車の現在地を確認していた。

 ほどなくミキサー車が到着した。作業を終えた車と入れ替わり、コンクリを流し込む。予定通りの到着にほっとした表情の若者は、「コンクリは絶え間なく流し込まないと強度にムラが出るんです」。

 和建設に入社して4年目の現場監督。この日のために作業員やコンクリをならす職人ら20人ほどを手配した。「現場がピリつく重要な工程。準備を済ませ、当日は安全確認や品質チェックに徹しているのが理想です。今日も順調でした」。予定通りミキサー車30台分のコンクリを流し終えた。

 ◆

 安芸市出身。清水ケ丘中学校でサッカーを始め、安芸高校でも続けた。始めたばかりの頃は、自分勝手にひたすらゴールを狙い、ミスをしたチームメートに厳しい言葉を浴びせていた。そんな時に、キャプテンは「落ち着けよ」と笑顔で諭してくれた。中高を通じ自身が主将に選ばれることはなかったが「どんな状況でも仲間に明るい声をかけて、信頼される存在。そんなキャプテンに、ずっと憧れてた」という。

 将来の仕事についてあれこれ考えるうち、中学時代の2011年に「3・11で崩れた建物をテレビでたくさん見た。大きくて安全な建物を建てたい」との思いが募った。大阪工業大学の建築学科に進んだ。

 2年の時、大阪府で建設中の大規模ショッピングモールを見学する機会があった。大勢の作業員の中に、輝いて見える男性がいた。その人が歩く先々で、職人が集まり工事の相談をしていた。現場監督だった。

 「現場の全てを把握してる感じ。大きな工事を中心で動かす、すごい存在に見えた」。その姿が、サッカー部のキャプテンに重なって見えた。自分もそうなりたい、と思った。

好きな言葉

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 入社1年目の秋。15階建てマンションの建設に携わり、現場監督の肩書をもらった。とはいえ「先輩の仕事を見るのが仕事」。2年目で資材管理を任されるようになった。電気設備用のパーツや型枠用材の発注、補充を担当した。

 徐々に仕事に慣れてきた頃。コンクリ打設を翌日に控えた朝、現場の職人に「部品が足りない」と伝えられた。型枠で使う資材が一つ足りなかった。

 たった一つ。だが、それが無ければ作業が始まらない。当日は30人近い職人が集まる予定で、キャンセルともなれば工期にも響く。真っ青になって、取引業者に片っ端から連絡して回った。何とか確保できて事なきを得たが「完全に僕の油断でした」。苦い教訓となった。

 今の現場が3カ所目。後輩もできた。

 「気の抜けない、責任の重い仕事ですけど、みんなで一致団結してやるのが好き。職人さんが働きやすい環境をつくって『小松の現場なら行きたい』と言ってもらうのが夢です」

 どんな時でも頼られるキャプテンに―。学生時代に憧れた姿を目指し、今日も現場で汗を流す。(写真と文・新田祐也)

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