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2022.06.18 08:00

【部活の地域移行】中山間で現実味はあるか

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 多感な中学生時代に何かのスポーツに打ち込んだ経験が、人生の財産になっている人は少なくないだろう。心身の成長に大きな影響を与える中学運動部の活動が、転換期を迎えている。
 スポーツ庁の有識者会議が公立中の部活指導について、地域や民間の団体に委ねるべきだとする提言をまとめた。2023~25年度を「改革集中期間」として休日の部活指導の地域移行を進め、その後、平日にも広げる。スポーツ庁は提言に沿って取り組む方針だ。
 背景には、歯止めがかからない少子化がある。提言は、生徒の減少により、学校単位で部活を維持することが難しくなりつつある状況を挙げる。また、部活に費やす時間と労力が教員の多忙化につながっており、地域移行には、学校の「働き方改革」を進める狙いもある。
 高知県内でも、少人数で部活ができなかったり、大会に複数校の連合チームで臨まざるを得なかったりするケースが増えている。子どもたちが希望するスポーツを続けられる環境は追求していくべきであり、学校が難しいのであれば、その受け皿を「地域」に頼るのも避けられない流れだと言えよう。
 部活の舞台が地域になれば、多様な世代が参加して、地域スポーツの振興につながる可能性もある。
 だが、実現へのハードルは高いと言わざるを得ない。大きな課題の一つが指導者の確保だろう。
 提言は、地域の受け皿として、スポーツ少年団や総合型地域スポーツクラブなどを想定。競技経験のある住民らが資格を取得して指導できるよう研修を充実させ、教員も希望すれば従事できるとした。
 ただ、一定の人口規模があることを前提にしている印象は否めず、中山間地域などでは現実味を欠いていないか。地域間の格差が広がる懸念が拭えない。
 部活が教員の献身的な姿勢で成り立っているとされる中、地域移行後は、指導者の謝礼や施設利用料などで参加費用が増える可能性が高い。困窮世帯の支援策も問われる。提言は、企業の協賛金や公的支援の拡充を通じた負担軽減を掲げたが、財源の確保はまだ不透明だ。
 ほかに、事故発生時の責任をどうするか、試合結果を高校入試の評価にどう反映させるか、など検討を要する項目も少なくない。
 こうしたことから高知県内の現場でも戸惑いが強いようだ。
 教員負担が「確かに軽くなる」との声はあるが、教員と生徒の信頼関係や生徒指導に生かすといった観点から、学校と部活を切り離すことに懐疑的な意見も聞こえてくる。
 とはいえ、学校で部活ができない現実があれば放置はできまい。
 提言は、自治体に推進計画の策定を求めている。各市町村は、当事者である子どもや保護者の意見も踏まえながら、地域の実情に合った方法を探る必要があろう。スポーツ庁は速やかに、支援策に充てられる財源の見通しを示すべきだ。

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