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2022.06.17 08:00

【コロナ検証】政治的配慮はいらない

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 新型コロナウイルス感染症対策の効果を検証し、教訓を新たな取り組みに生かすことが重要だ。次の流行に備え、組織を整備し実効性のある運用へ議論を深める必要がある。
 政府の新型コロナ対応を検証する有識者会議が報告書をまとめた。司令塔機能の強化や保健医療体制の在り方などに言及している。
 国内での感染初確認から2年5カ月になる。この間、検査や医療体制は後手に回り、米欧に比べて遅いワクチン接種にも不満が高まった。
 報告書は、2009年の新型インフルエンザ流行を取り上げる。当時まとめた提言は、医療機関と行政の連携強化などを求めた。ところが平時になると危機意識が薄れて、対応できなかったと指摘する。
 今回の教訓をうやむやにするなということだろう。課題を真剣に受け止め、改善する姿勢が大切だ。
 報告書を踏まえ、岸田文雄首相は有事に企画立案や総合調整機能を担う「内閣感染症危機管理庁」の創設を打ち出した。また、米疾病対策センター(CDC)をモデルに、専門家組織を一元化して科学的知見の発信を担う「日本版CDC」と、厚生労働省の関係部署を統合して「感染症対策部」を新設する。
 平時は感染症対策部が日本版CDCや関係自治体と連携し、有事には感染症危機管理庁の下で一元的に感染症対策を行うことを目指す。実効的に機能するように、首相の指導力を期待したい。
 振り返ると、新型コロナ禍で経済活動は大きく停滞し、外出自粛は生活スタイルを大きく変えた。初期には小中高校の一斉休校が唐突に要請され、学校現場や保護者らを困惑させる場面もあった。
 また、感染拡大が懸念される中、緊急事態宣言の発令や観光支援事業停止の遅れが批判されもした。一方で、飲食店には休業要請や酒類の提供禁止などが繰り返され、その効果を疑問視する声が上がる。
 制約を強いながら、もたらされる効果が分からないようでは施策への協力は期待できない。報告書は、国民とのコミュニケーションの重要性にも触れる。国民への要請は「納得感と実効性」を高めないといけないと指摘する。
 そう言いながら、感染対策に関わった安倍、菅両政権の関係者に聞き取りが行われていないというのは納得しがたい。施策の意図や評価は検証に欠かせない。歴代政権を刺激したくないというのでは身勝手だ。
 首相は当初から、参院選前には司令塔組織の整備を表明する予定で、有識者会議の検証と並行して政府内で検討していたという。会議は初会合から1カ月という制約があったにせよ、政治的な配慮があるようでは対策を曇らせかねない。
 新型コロナ感染が収束しない以上、感染拡大防止と社会経済活動の両立を引き続き模索していくしかない。新たな感染症への警戒も怠れない。必要なのは科学的知見と教訓を生かしながら、透明性のある対策で実効性を高めることだ。

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