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2022.06.16 08:00

【国会閉幕】説明不足では共感は遠い

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 岸田文雄首相は安全運転の姿勢を貫き、対決法案がほとんどないこともあって野党は存在感を示せなかった。参院選をにらんだ攻防は上滑りに終わった印象が強い。
 通常国会が閉会した。政府が新規提出した61法案は全て成立した。対立軸が定まらなかった今国会を物語るように思える。
 このうち経済安全保障推進法は、半導体など重要物資の供給網を強化する。そうした対応は必要だ。一方で運用面には危惧がある。規制と自由な経済活動が両立できるように丁寧な取り組みが求められる。
 子ども政策の司令塔となる「こども家庭庁」の設置関連法も成立した。少子化や児童虐待、貧困などの解決に当たる。日本は子ども関連予算が欧州諸国と比べて低水準だと指摘される。首相は、来年の経済財政運営の指針「骨太方針」に倍増への道筋を示す考えを表明した。財源の確保へ積極的な関与を望みたい。
 2022年度予算は一般会計の歳出が過去最大の107兆円超となった。さらに補正予算が編成された。近年は巨額の補正予算で歳出が膨らむ傾向にある。新型コロナウイルス対応の経済対策などは必要だが、国会審議が甘くなるとされる補正予算に頼りすぎては財政規律をゆがめる。
 物価高対策へ当初予算の予備費を取り崩し、その分を補正予算で穴埋めする手法もとられた。予備費の支出は国会で精査されないため、使途が曖昧になりがちだ。国会が関与する方策をとることが基本だ。
 国の長期債務残高は拡大している。金利が上昇すれば利払い負担が増大し、財政は一段と悪化する。必要な施策が財源面から制約を受けるようになっては元も子もない。
 防衛費を巡り、首相は5月の日米首脳会談で「相当な増額」を伝えた。安全保障環境の変化が意識される中、必要な対策は取らなければならないが、財源は不明確で国会への説明も不足している。
 首相は施政方針演説で、国民の声に耳を澄まし、しっかりと説明する「信頼と共感」の政治姿勢を堅持すると述べた。しかし、首相が掲げる「新しい資本主義」は分配重視が後退した。投資を促す資産所得倍増を打ち出した姿勢の説明も十分とはいえない。
 米国はインフレ抑制へ利上げを加速するとみられ、円相場は値下がりしている。岸田政権は「アベノミクス」を継承し、景気浮揚のため大胆な金融緩和を求めている。
 円安は特に中小企業への打撃となる。ウクライナ情勢もあり消費者物価も上昇している。物価高への対応を「評価しない」世論は「する」の2倍を上回る。内閣支持率は6割弱あるが、強い信頼と共感を得ているようには見えない。
 一方、野党の足並みも乱れた。内閣不信任決議案は立憲民主党会派だけでの提出となった。政権監視の在り方は再構築が迫られている。
 新型コロナ対策は、社会経済活動の再開へ軸足を移す動きが強まっている。参院選の論点は多い。

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