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2022.06.15 08:00

【旧文通費の使途】公開見送りは国民軽視だ

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 国民感覚と明らかにずれた国会議員特権が、そのまま続くことになった。見直さなければ不信が深まることは分かりきっているのに、対処しなかった。政治の劣化の深刻さを物語るのではないか。
 国会議員に月額100万円が支給されている「調査研究広報滞在費」(旧・文書通信交通滞在費=文通費)を巡り、使途の公開が見送られる方向になった。与野党は、きょう閉会の通常国会中に「結論を得る」としていたが、合意に至らなかった。
 文通費の問題で一義的に問われるのは、税金を原資とする政治資金の適切な利用だ。ただ、意味合いはそれにとどまらない。国民の多くが疑問を抱く問題に対してきちんと応えられるか、国会の姿勢が試される象徴的なテーマでもあった。今回の結果を「国民軽視」と言われても仕方あるまい。
 文通費の見直し議論は、昨年の衆院選で初当選した日本維新の会の議員が、在職1日でも満額支給されたことを問題提起して浮上した。
 年末の臨時国会で、野党側は日割り支給に加え、使途公開と未使用分を国庫に返納できるようにする法案を提出。これに対し自民党は、日割り支給の優先を訴えて折り合わず、今年4月、日割り支給を導入する法改正が行われた。
 この時、各党は、文通費を調査研究広報滞在費に改称し、それまで「公の書類発送、通信のため」と法律で定めていた使途を広げている。だからこそ、使途の透明性の確保がより重要になっていたが、手を付けなかった。自分たちに都合の良い部分のみを見直した形で、これほど露骨な「お手盛り」はない。
 使途公開は自民党を中心に根強い消極論があったとされる。非課税で領収書が必要なく、返還もしなくてよい文通費は、使い勝手が良く、秘書の給与や事務所費などにも使われているという。自民党総裁の岸田文雄首相も「期限を区切って議論することではない」との姿勢だ。
 だが、このような対応で国政は地方に顔向けできるのだろうか。地方議会の多くは、文通費に近い存在の政務活動費について、時代の要請に応じて使途を公開し、透明性を高めてきた。事務作業が増えることは確かだろうが、それが公開しない理由にはならない。
 共同通信が4月に行った世論調査では88%が「使途を公開すべきだ」とした。この問題を重視して参院選で訴えていく野党もいる。このまま幕引きにはならないだろうし、そうしてはいくまい。
 国会議員の国民感覚とのずれは、他にも見受けられる。4月には衆院赤坂議員宿舎の家賃が「格安相場」とされる状態からさらに下げられた。衆院小選挙区定数「10増10減」を巡り、「月額100万円未満の国会議員を多少増やしても罰は当たらない」との衆院議長発言もあった。
 これらを個別・属人の問題と矮小(わいしょう)化してはいけない。国民の感覚に鈍くて国民が共感する政治をできるはずがない。

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