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2022.06.11 05:00

【不信任2案否決】課題と疑念はなお残る

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 国会会期末を控え、立憲民主党が岸田内閣と細田博之衆院議長への不信任決議案を提出し、与党などの反対多数で否決された。いずれの不信任案も野党勢は足並みがそろわず、与党は粛々と対応した。攻防は緊迫感を欠いた。
 内閣不信任案は、政権と対決する野党の切り札だ。だが近年は会期末に提出するのが恒例化し、重みを失いつつある。対立する局面が少なかった今国会での提出は「パフォーマンス」との批判も予想され、路線の違いが顕著になってきた野党勢が結束できない状況も見えていた。
 それでも立民は提出に踏み切った。「批判・対決路線」から「政策提案路線」への転換が国民に浸透せず、党支持率は低迷している。その中で参院選に向けて存在感を示す必要があったからにほかなるまい。
 不信任案では、岸田内閣の物価高対策を挙げ、「国民の苦境を放置するのは許されない。経済無策だ」と批判した。社民党と共同提出し、共産党は賛成したが、国民民主党と日本維新の会は反対に回った。
 結果として立民は、「岸田インフレ」などの言葉を発信できたものの、野党の分断を際立たせ、まとめる力のなさも露呈した。国会戦略としてどうだったのか、振り返る必要があろう。同時に、不信任案に反対した国民民主は、立ち位置について改めて説明が求められる。
 与党は不信任案を「選挙目当て」と即座に否決した。ただ、野党の主張を一顧だにしない姿勢はいかがなものか。
 物価高対策を巡っては、補正予算を成立させたものの、予備費が多くを占め、ガソリン補助金以外は効果を発揮しているとは言いにくい。
 円安も一因になっている。政権が目玉にした、家計への分配政策も拍子抜けに終わった。物価だけが上がって賃金が上がらない経済構造は変わる兆しを示せていない。
 岸田文雄首相は不信任案の否決を受けて「信任を得た」と述べた。信任は限定的なものだということを肝に銘じてもらいたい。
 細田衆院議長の不信任案は、政治への信頼を損なう発言や、週刊誌で報じられたセクハラ疑惑の説明不足が理由とされた。
 細田氏は、衆院の「1票の格差」是正のための小選挙区定数「10増10減」に否定的な発言を繰り返した。投票価値の平等を尊重した国会での決定に、その長である議長が異論を唱えた格好だ。また、「月給100万円未満の議員を多少増やしても罰は当たらない」と発言し、国民感覚とのずれが表に出た。
 セクハラ疑惑は「事実無根」とし、自民党も「週刊誌報道への便乗は理解に苦しむ」とするが、見過ごすことのできない疑惑であり、説明責任も果たされていない。
 不信任案は、与党の「数の力」で否決されたが、これらの問題を踏まえると、国権の最高機関の長としての資質に疑念は消えない。細田氏を議長に推した自民は、問題に正面から向き合うべきだろう。

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