2022.06.05 08:40
高知の人気食品、ネットで高値転売横行 ケンピ7倍・ごっくん4倍 悩む業者
高値でネット転売されている県内の和菓子や清涼飲料のコラージュ(松本康裕作成)
■匿名の注文
「なんで注文者が匿名なの?」
昨年末、西川屋老舗(高知市北竹島町)の担当者は、大手ネット通販のアマゾン経由で入ってきた和菓子の注文に首をひねった。注文者の氏名欄には「依頼主」とあるだけで、大阪府内の民家に送るよう求めていた。
不安になり、「依頼主」が注文した自社商品をネット検索してみて驚いた。定価540円の「元祖ケンピ」がヤフーショッピングに3650円で出品され、そこには同社のオンライン販売用の写真が勝手に掲載されていた。説明文も全く同じだった。
同社は弁護士を通じて、ヤフーの出品者に書面で抗議。定価の7倍での出品は取り下げられたという。
ただ、この出品者が先の「依頼主」かどうかは分からないまま。「転売目的だと思ったけど、そう裏付ける確証もなく、発送するしかなかった」と担当者。
「3650円もすると思われるのも、見ず知らずの人が勝手に利益を得ているのも腹立たしい。でも、実名の購入者にもこんな人が紛れ込んでいるかも」と頭を抱える。
こうした事例は、他の県内メーカーでも頻発している。
馬路村農協は1本140円の「ごっくん馬路村」がたびたび転売され、今も通販サイトに2~4倍の出品がずらり。長野桃太販売課長は「商品イラストを勝手に使うようなひどい事例以外は対応しきれない」と嘆く。
県西部の菓子メーカーも10年来、悩まされている。過去には通販サイトに掲載されている出品者の住所に社員を派遣したことも。
「ところが、マンションの一室には全くの他人が住んでいた。転売をやめるよう内容証明を送っても、無視されることが多い」。現状、自社ホームページで転売禁止を呼び掛けるぐらいしか手がないという。
■取材拒否
本紙は、ヤフーショッピングで高知市の和菓子メーカーの商品(定価1620円)を4037円で出品している人にメッセージを送って経緯を尋ねた。
出品者の住所は、群馬県内の住宅街。メーカーにはここと取引がなく、商品写真を無断転載していることは事前に確認した。
出品者は「取材は受け付けておらず、回答はできかねます」と返答。高額な理由は「送料を含め必要経費を鑑みた値段」とし、無断転載には答えず。数日後、出品はサイトから消えた。
こうした高値転売はスポーツやコンサートのチケットでは法律で禁じられ、新型コロナ下で品薄だったマスクも2020年に同様の措置が取られた。しかし、食品などを規制する法律はない。
消費者庁は「価格は需要と供給で決まる。模倣品や危険物が届くわけでなく、消費者も選んで購入しているので規制はなじまない」と説明する。
消費者問題に詳しい高知弁護士会の皿田幸憲弁護士は「メーカーに苦情が来て業務に支障が出れば、転売者を業務妨害罪に問える可能性もあるが…。現実的じゃない」。
大手通販サイトには同じ商品に複数の出品者が乱立しているが、メーカーが定価で出品していることも少なくない。すぐに〝ポチる〟(購入ボタンを押す)ことは控え、まずは商品の相場を調べるひと手間をお忘れなく。(安岡仁司、蒲原明佳)