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高知新聞PLUSの活用法

2022.06.01 08:00

【補正予算成立】使途の説明を軽視するな

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 国会の事前チェックを原則とする「財政民主主義」が軽視されるようでは、財政規律は緩む一方となる。使途が明確にされない予備費の活用には慎重さが求められる。
 成立した2022年度補正予算の歳出総額は2兆7千億円になる。22年度当初予算から支出した予備費とほぼ同額の1兆5200億円を積み増した。予備費を取り崩した後、補正予算で穴埋めする異例の手法がとられた。
 政府は4月下旬、物価高騰に対応する緊急対策を取りまとめている。燃油価格の抑制策や、低所得の子育て世帯向け給付金などを盛り込んだ。22年度予算の予備費などを財源として先行実施し、残りを補正予算で対応する方針を決めていた。
 予備費の支出には国会の議決は必要ない。このため、使途が不明確になる懸念がつきまとう。言うまでもなく、予算がどのように使われるか国会で精査することが基本だ。政府の裁量で決めていては、恣意(しい)的な運用に陥りかねない。
 もちろん、災害や物価のさらなる高騰など予期せぬ財政需要があれば、迅速に対応することが求められる。機動的な予算執行のために必要なのは分からないではない。だが、あくまで緊急時への備えであり、使い勝手のよさをいいことに多用しては、財政規律をゆがめてしまう。
 補正予算編成に合わせ、新型コロナウイルス対策名目である予備費の使用目的が拡大され、物価高騰対策にも支出できるようにした。そうした対応は、使途を明確にしたようで実際は曖昧なものにしかねない。国会の監視が甘くなっては一段の財政悪化を招くことになる。
 補正予算の財源は、全て赤字国債で賄われる。赤字国債なしの予算編成が困難になっている現状を映し出している。だが、財政法で本来は認められていない対応だ。それが格段の問題もないかのように行われる状況が健全なはずはない。
 国の長期債務残高は1千兆円を超えた。高齢化に伴う社会保障費の増加に加え、新型コロナ対策が歳出を押し上げた。金利が上昇すれば利払い負担は増える。財政運営を厳しくする懸念が拭えない。
 年金や医療のほか、厳しくなる安全保障環境への対処など課題は山積している。物価高も長期化する恐れがある。安易な対応を重ねていては財政の硬直化につながりかねず、求められる施策が行えなくなる可能性が高まる。将来世代の負担を大きくするようでは先行きの不透明感は増してしまう。
 参院選をにらみ、大規模な補正予算の編成を求める意見が上がった。必要な支援は行わなければならない。ただ、大切なのは規模を膨らませることではなく効果だ。財政との向き合い方が問われている。
 財政への意識は、文書通信交通滞在費から名称変更した国会議員の「調査研究広報滞在費」の扱いにも見て取れそうだ。使途公開や未使用分の国庫返納は積み残されている。うやむやにはできない。

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