2024年 04月25日(木)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2022.05.25 08:00

【露軍侵攻3カ月】停戦へ粘り強く圧力を

SHARE

 ロシア軍が隣国ウクライナに侵攻して3カ月がたった。世界の平和と安定を担うべき国連安全保障理事会の常任理事国による蛮行は、国際秩序を大きくゆるがせた。
 当初から激戦地となったウクライナ南東部の要衝マリウポリ制圧は宣言したものの、主戦場の東部で米欧などの武器支援を受けたウクライナ軍と一進一退の状況が続く。停戦の兆しはなく、戦争の長期化が現実味を帯びる。プーチン大統領にとっては誤算続きだろう。
 侵攻をいくら正当化しても、他国の主権と国民の生命を踏みにじる蛮行が、国際社会で容認されることはない。戦闘が長引くほど、罪のない民間人の犠牲は増え続け、ロシア国民の生活も苦しくなる。プーチン大統領は自国の行為を客観的に見つめる必要がある。
 侵攻の筋書きは戦術でも、戦略的にも破綻を来しつつあろう。第2次大戦での対ドイツ戦勝記念日の演説で、プーチン大統領は侵攻を「唯一の正しい決定だった」と正当化したが、戦術的な成果を示すことはできなかった。
 電撃的勝利を期して3方向からウクライナに侵入したものの、首都キーウ(キエフ)攻略に失敗して北部からの撤退に追い込まれた。戦力を集中させた東部でも膠着(こうちゃく)状態に陥っている。
 戦場に残されたのはロシア軍による残虐行為の痕跡だった。キーウ近郊の街には民間人の遺体が散乱し、マリウポリでは集団墓地とみられる塹壕(ざんごう)が見つかった。「戦争犯罪」を隠蔽(いんぺい)しようとした可能性が指摘される。
 ロシア軍の非人道性は、侵攻の戦略的な位置付けも狂わせたのではないか。これまで軍事中立路線を取ってきたフィンランドとスウェーデンでは、侵攻により北大西洋条約機構(NATO)加盟の世論が高まり、正式な申請に踏み切った。
 ウクライナ侵攻はNATO拡大阻止が目的の一つだったが、かえって北方拡大を招いた格好だ。加盟が認められれば、ロシアは新たに約1300キロにも及ぶ国境で、NATOと対峙(たいじ)せざるを得なくなる。
 戦争を長引かせて、プーチン大統領は何を目指すというのか。ロシア軍も甚大な損失を出し、国内経済は米欧などによる経済制裁で物価が急騰するなど影響が拡大している。情報統制を強めても、政権批判や反戦の世論をいつまでも抑え込むことはできまい。
 ウクライナでは民間人の犠牲者が数万人に及ぶとされ、全体像も把握できない状況だ。いくつもの街が破壊され、国内外に避難した人は約1440万人にも達する。これ以上の犠牲を防ぐことは、国際社会の喫緊の課題にほかならない。
 国連安保理は、拒否権を持つロシアが当事者になったことで機能不全に陥っている。その状況で、どう実効性のある対策を講じるか。国際社会は連携してロシアへの圧力を強め、粘り強く早期の停戦、政治的な解決を促す必要がある。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月