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2022.05.20 08:00

【時短命令「違法」】私権制限はより慎重に

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 新型コロナウイルス対策の改正特別措置法に基づき、営業時間の短縮命令を受けた飲食チェーンが東京都に損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は命令を違法と断じた。
 命令時には、店内の感染防止策など個別の事情を考慮する必要があると指摘し、特措法が要件とする「特に必要がある」場合には当たらないと判断した。営業時間の短縮は、事業者にとって不利益な処分であることは言うまでもない。政府や自治体はより慎重に判断すべきだ。
 原告の飲食チェーン26店舗は2回目の緊急事態宣言の期間中、時短要請に応じず、都から昨年3月、午後8時以降の営業停止命令を受けた。原告は、特措法の命令規定は憲法の保障する「営業の自由の侵害だ」と主張していた。
 東京地裁は、特措法による規制は「不合理な手段であるとは言えない」と違憲性は否定。その上で店舗内の換気や消毒といった対策をしていたと指摘したほか、4日後の緊急事態宣言解除が公表されており、命令の「感染抑止効果はわずかだった」などとして違法と判断した。
 一方で、命令を巡る都知事の判断については、意見聴取した専門家が必要性を認めたことなどから過失を否定し、賠償請求は棄却した。
 違法でありながら、賠償請求を認めない判決は分かりにくい面がある。ただ、司法がコロナ対策でも私権の制限には慎重さが必要だとする姿勢を示した意味は大きいといえよう。
 特措法に基づく緊急事態宣言やまん延防止等重点措置のたびに、飲食店は時短営業や酒類提供自粛の対象となってきた。新たな感染症の流行で緊急性があったとはいえ、国会がどこまで対策に伴う私権の制限を議論したかには疑問も残る。
 流行の第6波では、感染力が強い半面、重症化リスクは低いオミクロン株へと主体が置き換わり、飲食店を中心とした従来対策には疑問の声もあったが、政府の対策は前例を踏襲した内容だった。効果的な対策には現状の検証が欠かせないものの、政府にはそうした姿勢が不十分だったと言わざるを得まい。
 政府は5月になって、ようやく対策を検証する有識者会議を開いた。医療提供体制や行動制限などを検証し、改善点を盛り込んだ提言を6月中にまとめるという。
 ただ、コロナ対策は安倍、菅、岸田の3政権が担い、この約2年半の間には、病床が逼迫(ひっぱく)し、入院さえできずに自宅で亡くなる人もいた。失政批判にもつながり得る検証が、果たして1カ月余りでできるだろうか。形だけの検証と国民の目に映れば、深刻な政治不信を招きかねない。
 コロナ禍は現状、新規感染者数が下げ止まり、オミクロン株の新たな派生型の確認も相次いで、さらなる流行も懸念される。私権の制限といった影響を最小限に抑えながら、より効果的な対策を続けられるかどうか。検証は期限ありきではなく、収束まで継続する姿勢が求められる。

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