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2022.05.19 18:00

【動画】リープルって何味? どうやって作る? 高知県民のソウルドリンクの秘密に迫る!

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 高知県のご当地乳酸菌飲料といえば、ひまわり乳業(南国市物部)の「リープル」。レトロなパッケージと素朴な味わいで、県民に50年以上愛されています。でも「リープルって何味?」と聞かれると、答えられない人が多いのでは。リープルってどうやって作るの? いつから存在してるの? 4代目社長・吉沢文治郎さん(61)へのインタビューで、“県民のソウルドリンク”の秘密に迫ります。(聞き手=メディア企画部・竹内悠理菜)

【生い立ちの秘密】リープルはいつ生まれた? 名前の由来は?

――リープルは「高知の味」として定着しています。昔からあるイメージがありますが…。

吉沢文治郎社長(以下、吉沢):日本の乳酸菌飲料としては、1919(大正8)年のカルピス、1935(昭和10)年のヤクルトなんかが先輩。で、その後の時代に、先輩たちを追いかける乳酸菌飲料ブームがあったらしくてね。

ひまわり乳業4代目社長・吉沢文治郎さん

ひまわり乳業4代目社長・吉沢文治郎さん

――そんな昔に、ブームがあったんですね。

吉沢:うん、多分ね。同時期に日本各地に同じような飲料が登場して、よく売れた商品が今も残っているんだと思う。雪印メグミルクの「カツゲン」が1956年、森永乳業の「マミー」が1965年。リープルは60年代にできたと言われているから、このあたりの製品と同期組かな。

――できたと「言われている」?

吉沢:うん。リープルの生い立ちは謎が多いんですよ。なぜ「リープル」って名前かもよく分からない。「RIPPLE」自体は「さざ波」という意味の英単語やけど…。「見た目がリンゴの実(果肉)っぽい色だから、アップルにちなんだ」という説もあって。

――ひまわり乳業さんでも分からないとは…。

吉沢:そう。英語のスペル通りに読んだら「リップル」が正しいしね。当時の誰かが英語に弱くて、読み間違えた可能性すらある。そもそも、リープルはうちが作ったものじゃなくて、土佐市にあった南海乳業さんの商品なんです。1973年の合併でうちの商品になったけど、当時の従業員さんはもう、おりませんのでね。

昔のリープルは、こんな形の瓶に入っていたそうです

昔のリープルは、こんな形の瓶に入っていたそうです

【甘み、酸味の謎】乳酸菌はなぜ入れる? 洋風化の流れに乗って

――乳酸菌飲料と言えば、生水の衛生状態に困った旧日本陸軍が、整腸効果を期待して納入を求めた歴史もあります。「軍用カルピス」もあったとか。リープルは戦後生まれですが、乳酸菌は整腸作用のために入れたんでしょうか?

吉沢:もちろん、整腸作用を含めて健康増進が一つの目的ですね。あとは、味のため。

――味…。乳酸菌で発酵させてヨーグルト味、ということですか。

吉沢:ううん。「発酵乳」のくくりじゃないから、ヨーグルトより菌の量は少ないんですよ。この絶妙な量がポイント。

――企業秘密の部分ですね。乳酸菌を入れると、どんな味になるんですか?

吉沢:まあ言葉で表現するなら、「ほのかな酸味」ということになるけど。うーん、どんな味だろう…。乳酸菌を入れて出す味って、洋風なんですよね。ハイカラな酸味というか。

――ハイカラ!

吉沢:そう。食生活がだんだんと洋風化していく中で、乳酸菌飲料は日本人になじみやすかったんじゃないかな。牛乳をやっと飲み出した日本人に、いきなりバターやチーズはハードルが高そうな気がするよね。リープルは60年代生まれだけど、大きくはその流れの中にあったと思いますよ。

ひまわり乳業は今年で創業100周年。リープルもお祝いパッケージです

ひまわり乳業は今年で創業100周年。リープルもお祝いパッケージです

【作り方の謎】「懐かしい味」の秘訣は?レシピは半世紀以上、変更なし

――リープルを飲んだ人は「懐かしい味」と表現します。どうやって作っているんですか?

吉沢:まず、脱脂粉乳などに乳酸菌を加えて、ほのかな酸味を付ける。これをベースに、砂糖と、爽やかな風味を付けるフレーバー(香料)を入れ、味を調える。

――シンプルなレシピに聞こえます。

吉沢:でしょう。だからこそ、再現が難しいみたい。甘みと酸味、爽やかな香りの絶妙なバランスが「リープル味」の肝。前にテレビ局がリープルを作ってみようってやっていたけどね。うちと同じフレーバーを使っても、全然同じ味にならない。

――奥深いですね。

吉沢:半世紀以上、レシピを変えてないんですよ。フレーバーも同じ物で。

――「懐かしい味」の秘訣(ひけつ)はそのあたりに理由があるでしょうか。

吉沢:そうかも。時代に合わせて味を変える方が一般的ですから。例えばうちのコーヒー牛乳は、60年代当時と比べて3割くらい甘みが少ない。でもリープルは甘みを変えたら「リープル味」じゃなくなってしまうから、「甘い=うまい」だった時代の味わいのままやね。

工場のベルトコンベヤーを流れるリープル

工場のベルトコンベヤーを流れるリープル


【愛される高知の味】「県外の息子に送りたい」という声も

――リープルって、どのくらい売れているんですか?

吉沢:今は年間で約60万リットル。25メートルプール1杯分くらいかな。累計で言うと、ざっと計算してプール50杯分。

――たくさん飲まれていますね。

吉沢:皆さんが愛着を感じてくださっている、ということでしょうか。お土産用に新発売した冷蔵不要のロングライフリープルも、想定の1・5倍くらい売れていて。本当にありがたいです。

リープル柄の文房具、Tシャツ…。若手社員の発案でグッズをたくさん作りました

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――コロナ下で需要が高まっていたと聞きました。

吉沢:「県外にいる息子に送りたい」というお客さんの声がありましたね。気軽に帰省できない雰囲気の時期だったからね。そんな時に選んでもらえるのはやっぱり、うれしい。「高知の味」と思ってもらえている、ということですから。

――最後に。リープルの今後の展望をお願いします。

吉沢:変わらない味こそがリープル。その分、パッケージや売り方は時代に合わせようと思っています。若手社員が元気なのがうちの自慢。一緒に面白い商品を作っていきたいですね。


リープル工場にお邪魔しました。動画はこちら↓↓

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