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2022.05.19 08:00

【NATO加盟へ】北欧2国の重い中立転換

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 北欧2カ国が伝統的な軍事中立路線を転換するのは、ロシアによる軍事行動の帰結だ。ロシアは対抗措置に言及してけん制しているが、緊張をこれ以上高めてはならない。
 フィンランドとスウェーデンが、北大西洋条約機構(NATO)に加盟を申請した。ロシアのウクライナ侵攻は欧州の安全保障環境を激変させた。非同盟を掲げた国が新たな秩序を模索し始めたことが、その衝撃の大きさを物語っている。
 NATO側も積極的に受け入れる方向だ。通常は1年程度かかる加盟手続きを、前例のない速さで進める考えが示されている。
 ただ、足並みには乱れが見られる。加盟は全加盟30カ国の同意が必要となるが、トルコはテロ組織と見なすクルド労働者党(PKK)を両国が支援していると難色を示している。手続き中の両国への軍事攻撃にNATOが対処できるかは不透明で、早期の解決が望まれる。
 フィンランドとスウェーデンは隣国などの支配下に置かれたり、領土の一部を奪われたりした歴史がある。列強との争いを避けるため、非同盟中立を志向してきた。欧州連合(EU)には加盟しているが、NATOには加わらなかった。
 それにもかかわらず、ロシアの侵攻後にはNATO諸国と歩調を合わせて軍事支援を行っていた。ロシアの脅威を目の当たりにして、各国との連携へとかじを切った形だ。
 フィンランドはロシアと1300キロの国境を共有する。非同盟路線が支持され、NATO加盟支持は侵攻前は2割ほどだったが、侵攻後は7割を超えている。
 スウェーデンでも6割へと支持が伸びた。ロシア軍が飛び地カリーニングラード州で活動を続け、軍事的脅威が高まっていることに警戒感が強まっている。
 両国が加盟すれば北欧、バルト海におけるNATOの軍事的優位性は大きくなる。それは同時に、ロシア側の反発を意味する。
 プーチン大統領は、北欧2カ国とは領土紛争などを抱えておらず、NATO加盟自体は直接の脅威にはならないと冷静を装う。ただ、NATOは米国の利益の道具になり、地域を不安定化していると主張する。
 NATO側の軍事施設が両国内に置かれた場合は対抗措置を取る考えを打ち出した。北欧周辺への核配備も取りざたされ、フィンランド湾での軍事活動も辞さない構えだ。旧ソ連諸国でつくる「集団安全保障条約機構(CSTO)」との連携で対抗する姿勢ものぞかせる。
 ロシアはウクライナ侵攻をNATO拡大阻止と正当化するが、その蛮行がかえって北方への拡大につながろうとしていることを謙虚に受け止める必要がある。新たな緊張をつくり出しても孤立を深めるだけだ。
 北欧2カ国は重い決断をした。それにより、非同盟の立場から取り組んだ非核や軍縮への活動も影響を受けることもまた避けられない。これまでの評価を崩さない立ち位置の模索が必要となる。

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