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2022.05.19 08:40

700キロ先の島から気流に乗る? クロアシアホウドリを確認 高知県南国市久枝の海岸

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波打ち際で羽を広げるクロアシアホウドリ(南国市久枝)

波打ち際で羽を広げるクロアシアホウドリ(南国市久枝)

 西日本で見つかるのはまれとされるクロアシアホウドリがこのほど、南国市久枝の海岸で確認された。国内では東京都のはるか南の島々が主な生息地で、日本野鳥の会高知支部は「県内で生きた状態で確認されたのは、おそらく初」。どうやら高知から700キロ離れた島から来たようだ。いったい、どうやって飛んで来たのか。

 クロアシ―は、翼を広げると2メートルにもなる海鳥。国内では主に伊豆諸島の鳥島や小笠原諸島で繁殖し、魚や甲殻類などを食べる。気流を捉えて滑空し、数日間飛ぶことも。他のアホウドリと同様、羽毛目的で乱獲されてきた歴史がある。

 南国市の海岸で見つけたのは、獣医の山崎浩司さん(61)=高知市薊野東町。趣味の野鳥観察で訪れると、「これまでに見たことがない大きさの黒い鳥が、浜辺にうずくまっていた。自力では動けず、かなり疲れているようだった」。自宅に連れ帰り、アジの切り身を与えるなどしたが嘔吐(おうと)していたという。

 翌朝、のいち動物公園(香南市)で点滴などの処置を受けたが回復することはなく、死んでしまった。

 写真は偶然、現場を訪れていた本紙記者がカメラに収めていた。

 小笠原諸島でアホウドリの保護・研究などを行うNPO法人小笠原自然文化研究所の副理事長、鈴木創さん(57)によると、この時季は子育て終盤。大きくなったひなのために、餌を求めてあちこちを飛び回る頃だという。とはいえ、「東日本沿岸へ迷い込んだというニュースはしばしば聞くが、高知など西日本沿岸は聞かない。かなり珍しい」。 

 では、遠く離れた高知まで来た理由は?

 大気中のPM2・5などの粒子の流れを分析し、鳥の飛行経路の解明などに活用している気象予報士の太田佳似さん(61)=大阪府柏原市=が4月の30日間について解析したところ、こんな発見があったという。

 何と4月13日朝から14日夜にかけて、台風1号の影響により、本土の南約600キロにある鳥島から高知沖へと通じる「ベルトコンベヤーのような気流」が発生していたというのだ。

 アホウドリは、この時速10~20キロの流れに乗ってはるばる飛んで来た、と推測できるという。この際、強い雨に打たれながら長時間飛行を続けたことで体力を奪われたのではないかとし、「たまたま乗ってしまったばっかりに…」と境遇を哀れんだ。

 島から高知まで直線距離で700キロ超。クロアシアホウドリは今後、四国自然史科学研究センター(須崎市)で標本にされる予定という。(山下正晃)

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