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2022.05.17 08:38

高知県内の介護学校生が10年で7割減 興味持つ機会少なく

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期待に胸を膨らませ入学した学生たち(高知市針木北1丁目の平成福祉専門学校)

期待に胸を膨らませ入学した学生たち(高知市針木北1丁目の平成福祉専門学校)

 介護福祉士を養成する高知県内の専門学校の学生が激減している。2013年度に120人いた入学生は、22年度は37人。この10年で7割減となった。人材不足にあえぐ介護現場からは「少ないパイの奪い合い」「特に郡部は厳しい。このまま若い人が入らないと事業を縮小せざるをえない」といった声が上がる。

生徒に会えない
 介護福祉士を養成する県内の専門学校は「高知福祉」の介護福祉学科と「平成福祉」の2校で、いずれも高知市にある。

 今春の入学生は定員各40人に対し、高知福祉は12人、平成福祉は25人で多くが高卒生だ。両校とも14年度から定員割れが続いており、近年は2校合わせて年30~50人台で推移している。

 背景について、学校や介護施設の関係者は「少子化の影響」と口をそろえる。大学の総定員より受験生が少ない「大学全入時代」となり、これまでなら専門学校に進んでいた高校生の大学志向が強まっている。

 さらに、核家族化で高齢の家族と触れ合う機会が少なく、介護に興味を持つきっかけも持ちにくいという。

 専門学校の担当者は「高校のアンケートで福祉分野に興味がある生徒がゼロだったら、学校の進路説明会に参加できないことも。ペットや理美容といった華やかな世界に太刀打ちできず、生徒と対面すらできない」と嘆く。

 さらに、介護業界のネガティブイメージも追い打ちを掛ける。学校関係者によると、子どもが希望し、体験入学まで参加しても保護者が「介護はきつい」と入学を反対するケースがあるという。

ミラクル
 これに対し、複数の施設関係者は「(専門学校の新卒者の)初任給は20万円程度で、県内の他業種と比べても遜色ない。労働環境も含め待遇面はかなり改善したが、それが知られていない」とため息をつく。

 加えて「たまに地元出身の子が入ることもあるけど、ミラクルですね」。郡部の介護施設長は肩を落とす。

 近年、若い世代がほとんど入らず、定年後の継続雇用を増やすなどして人材を確保。介護職員のうち60歳以上が4割と高齢化が進んだという。

 「就職先は高知市や市近郊の施設に集中し、基本的に郡部には来ない。若い力はのどから手が出るほど欲しいけど、(入学生が)年に50人じゃ希望はない」。今後職員を確保できなければサービス縮小を考えざるを得ないといい、「施設に入れないと家庭内での虐待リスクは上がると思う。これは社会問題ですよ」と言い切った。

 別の施設長は「ヒューマンサービスの最前線で、やりがいのある仕事。ネガティブイメージを払拭するために、業界が一丸となってもっとアピールしないと」。

 高知県立大の田中きよむ教授(社会保障論)は「ケア労働が家庭労働の延長線上に捉えられ、専門性が不当に低く評価されがち」と指摘し、給与面など業界全体のさらなる処遇改善と、高校などでの福祉教育の充実を求めている。

 そんな中、今春入学した学生たちの胸は希望に満ちていた。

 平成福祉1年の西村憂飛さん(19)は「祖母に育てられたこともあって、お年寄りを大事にしたい気持ちが強い。親身になって接することのできる介護福祉士になりたい」。将来の介護業界を支える〝金の卵〟は、そう言って目を輝かせた。(石丸静香、松田さやか)

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