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2022.04.26 08:00

【知床観光船遭難】安全重視の運航だったか

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 北海道・知床半島沖で観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」が遭難した事故は、乗客乗員26人のうち、これまでに発見された11人の死亡が確認された。なお15人が行方不明になっている。
 亡くなった人は、カズワンが救助要請した海域から10キロほど北東に離れた海上や岩場のほか、知床岬の東側でも見つかった。不明者の捜索の範囲は、岬の先端周辺を中心に拡大しているという。
 現場付近の海水温は4度を下回っているようだ。低体温症で体力を奪われている可能性があり、残る乗客らの救助が急がれる。
 カズワンは午前10時ごろ、子ども2人を含む乗客とともに斜里町ウトロの港を出た。午後1時15分ごろ救助を要請し、午後2時ごろに「30度ほど傾いている」と連絡して音信が途絶えた。
 斜里町は朝から強風が吹き、波が高い状態だった。午後からは海が荒れることが予想され、地元漁協に所属する漁船は昼前に帰港していたという。そうした状況下に、カズワンの出港をやめるように忠告した人も複数いたようだ。それが聞き入れられなかったのは残念でならない。
 知床半島は世界自然遺産に登録される人気の観光地で、4~11月ごろには観光船が運航される。運航会社の間では安全のために気候や海洋の情報を共有するほか、複数の船が海に出ることで万一の場合に助け合うようにしているという。
 だが、事故があった日には他社は今シーズンの営業を始めておらず、カズワンの運航会社「知床遊覧船」1社だけがツアーを始めた。せっかくの会社間の連携もうまく機能しなかったことになる。
 この海域は岩礁が多く、救助要請のあった時刻は干潮に近い時間帯だったという。ただ、その位置は把握され、航路通りに進めば通常は問題は起こらないとされる。風や波、浮遊物の影響などが考えられるようだが、それらを回避できなかったのは、そもそも航行できる環境ではなかったからとの思いが膨らむ。
 新型コロナウイルス禍は観光関連を直撃した。本格的な観光シーズンを迎える大型連休を控え、少しでも早く運航を始めたいと考えたのだろうか。だが、最優先である安全をないがしろにすることは認められない。会社がどう判断したのか明らかにする必要がある。
 カズワンは昨年5月に浮遊物と衝突して乗客がけがをし、昨年6月には出航後間もなく浅瀬に乗り上げる座礁事故を起こしている。事故が繰り返されてしまった。安全運航の徹底にどれほど取り組んできたのかが問われている。
 第1管区海上保安本部は業務上過失致死や業務上過失往来危険の疑いでの立件を視野に捜査している。徹底した原因究明を求めたい。
 大型連休が近づいてきた。高知県内も人の動きが多くなり、海や山のレジャーと親しむ機会も増える。もちろん日常から意識すべきことだが、すべては安全あってのことという思いを改めて確認したい。

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