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2022.04.21 08:00

【連合の自民接近】労働者の立場守れるか

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 国内最大の労働団体、連合の政治的なスタンスに変化がみられる。これまで支持してきた旧民主党勢力と距離を置き、自民党に接近している。組合員は約700万人いる。執行部は意図をしっかり説明すべきだ。
 連合は、昨年の衆院選は「立憲民主党を総体として支援」することを基本方針にした。しかし2月にまとめた基本方針では、政策実現へ立民、国民民主党と「連携する」とはしたが、参院選は「人物重視・候補者本位で臨む」と支持政党の明示を見送った。共産党と協力する候補を推薦しない方針も示した。
 連合系労組は、共産系労組と対立した歴史がある。衆院選後も共産との共闘を探る立民や、労組批判を続ける日本維新の会と国会対応で協調した国民をけん制した形だ。
 一方、自民からの働きかけに応じて同党との距離は縮めている。自民幹部らは昨年10月に就任した芳野友子会長と重ねて面談。今年1月の連合の新年交歓会には岸田文雄首相が出席し、参院選での協力を呼び掛ける場面があった。
 自民は3月の党大会で採択した2022年度運動方針に「連合との政策懇談を積極的に進める」とも明記。18日には党政務調査会の会合に芳野会長が出席して意見を述べ、「異例の対応」と注目された。
 連合が、自らが掲げる政策の実現へ政権与党の懐に入るのは一つの手に違いない。旧民主勢が股裂き状態で、政権交代が現実味を帯びてこない中ではなおさらだろう。自公政権が「賃上げ」を呼び掛けている点でも両者の思惑は一致する。
 傘下の有力労組の動きもある。自動車総連の中核である「全トヨタ労働組合連合会」は昨年衆院選で、旧民主党などに所属した組織内候補の擁立を見送った。その後、連携する政党を限らない方針を表明した。
 だが、全方位的とも見える立ち回りが、もろ刃の剣になる可能性も踏まえなければならない。
 連合は1989年、旧社会党を支持した官公労主体の総評と、旧民社党支持の民間労組が中心の同盟が結集して発足した。政権交代可能な政治勢力の結集を目指し、1993年の細川政権発足、2009年の旧民主党による政権交代を実現した。
 それらの活動の原点は、労働組合として、経営者より弱い立場の労働者の権利を守り、代弁することだ。
 自民は経団連など大企業の経営者団体と結びつく。経営側は、労働者に不利な制度や働き方を提案してこないとも限らない。その時に労働者の立場を守れるかどうか。
 政治スタンスの変化に対しては、これまで非自民、非共産の立場で活動してきた組合員にも戸惑いがあるだろう。労働団体が政治とどう関わっていけば、働く人全体の利益を守ることにつながるのか、しっかり見極めることが必要だ。
 一連の動きの背景には、傘下労組の考え方が多様化し、統一的な価値観を持ちづらくなってきたこともある。まとめ役としても連合の存在感が問われている。

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