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2022.04.14 08:24

1グラムの「種」をまく 物部川のアメゴ放流―魚信 はっぴぃ魚ッチ

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桜の花びらの下を泳ぐ、アメゴの稚魚。来春には釣り人を楽しませてくれる

桜の花びらの下を泳ぐ、アメゴの稚魚。来春には釣り人を楽しませてくれる


 アユは川の羊、アメゴは川のオオカミ―。

 こんな例えを教わった。アユはコケを食べて、アメゴは川虫などを食べる肉食だからという。

 県内の河川ではとかく羊が重視される。だけど、オオカミを上手に育めば、もっと多くの釣り人を楽しませることができる。

 そう話すのは、物部川漁協の松浦秀俊組合長。アユの専門家ながら、「うまくやれば費用対効果はアメゴの方が大きい」という。

 4月上旬、同漁協は2日間に分けてアメゴの稚魚約13万5千匹を放流した。特徴はそのサイズだ。

 全長4センチ、重さはわずか1グラム。県内で主に放流される10センチ前後のアメゴに比べるとかなり小さい。

 物部川では、3年前からこの小型稚魚の放流を始めた。「調査でも、釣り人の実感でも魚が増えた。効果は抜群」という。

 放流当日、作業を見て驚いた。

 組合員らはエアポンプの付いた容器を担いで川辺へと下りる。落ち葉のたまっているような緩い流れを探して、何回かに分けて稚魚を放っていく。橋の近くなどでまとめて放流する方法に比べて格段に手間が掛かる。

外敵の少ない場所を選んでアメゴを放流する釣り人

外敵の少ない場所を選んでアメゴを放流する釣り人

 なぜこうするかというと、流れの強い瀬には大きなアメゴがいて共食いされる恐れがあるから。大きな淵やえん堤の深みではカワウも襲ってくる。稚魚は緩い岩陰などで一定期間を過ごし、しっかり野生化してから瀬に出て、狩りを始めるのだという。

 同漁協によると、小型魚は外敵に見つかりにくく、釣り針に掛かる心配も少ない。人工的な餌付け期間が短いため自然環境になじみやすく、単価も安い。

 2日間の放流に延べ60人ほどが集まった。漁協組合員に加え、ルアーや毛針でアメゴを楽しむ県内の釣り人たちだ。

 「釣らせてもらってるんだから断れないっしょ」。そう言って容器を担ぎ、パンパンと手を合わせ、「頼むよ~」と愛情いっぱいに稚魚を見送った。

 「種まきなんです」と松浦組合長が狙いを語る。「釣れる、釣れないの結果だけではなく、どんな種をまき、どんな環境にすれば、魚のいる川になるか。釣り人も一緒に見てもらいたい」

 岩陰の水面。桜の花びらの下、放たれたばかりの稚魚が遊んでいた。好奇心いっぱいに浮遊物を食べる姿は、既に一丁前のオオカミだ。夏の濁りや冬の渇水を乗り越え、また会おう! (本紙・ハチ)

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