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高知新聞PLUSの活用法

2022.04.03 08:00

【少年法改正】更生の理念を重視せよ

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 成人年齢が18歳に引き下げられたのに合わせ、事件を起こした18~19歳の厳罰化を図る改正少年法が施行された。民法上は成人となった18~19歳を新たに「特定少年」と位置付け、扱いを大人に近づける内容だ。起訴後は実名報道も可能になる。
 ただし、この年齢は成長途上で未成熟な面もあるゆえに、立ち直りに向けた配慮が要る。あくまで健全な育成を目的とした少年法の適用対象であることに変わりはない。厳罰化で更生の機会が失われないよう、慎重な法の運用が求められる。
 改正少年法では、法の適用年齢を従来の20歳未満から引き下げない。全ての事件を家裁に送る仕組みは維持される。
 一方で「特定少年」は家裁から原則検察官に送致(逆送)し、20歳以上と同じ刑事手続きを取る事件を拡大する。現行の殺人や傷害致死などに、強盗や強制性交など「法定刑の下限が1年以上の懲役・禁錮に当たる罪」を追加した。
 厳罰化は犯罪の抑止効果も狙いの一つだろう。ただ、刑事犯で摘発される少年は、少子化もあって減少傾向にある。厳罰を求める被害者らの思いも理解できるが、加害者の更生には罪と向き合う必要がある。少年法が重視してきた視点である。
 家裁は非行の内容や成長環境などから少年院送致や保護観察といった保護処分を選択できる。だが、改正法は特定少年が民法上の成人であることを踏まえ、保護処分は「犯情の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲で行う」とした。
 さらに、日頃の不良行為から罪を犯す恐れがあると認められた「虞犯(ぐはん)」を家裁送致し、国が立ち直りに関与していく制度の対象からも外れた。改正によって若者が更生の機会を失う恐れが高まりはしないか。懸念を禁じ得ない。
 法改正を巡る法制審議会では、成人年齢との整合性から適用年齢引き下げを求める意見の一方、家裁による少年事件の背景調査や少年院収容などの保護処分を評価する声も根強く、専門家の議論は紛糾した。
 少年法を適用しつつ、成人の責任は負う改正の方向性は、政治主導による「妥協の産物」といってよい。懸念が残るからこそ、法の理念である立ち直りや社会復帰をより重視した運用が求められよう。
 改正に伴い、起訴後は氏名や顔写真など本人を特定する報道も解禁される。高知新聞社は、事件の重大性などを総合的に検討し、実名とするか匿名とするか、事案ごとに判断していく。
 18~19歳には高校生や大学生も多い。実名がインターネット上に残った場合などは復学や就職に大きく影響しかねない。各報道機関の姿勢も問われよう。
 改正法の付則には、施行5年後に社会情勢や国民意識の変化を踏まえて見直しを検討すると規定する。制度の変更が特定少年と呼ばれる若者の将来や社会の在り方にどんな影響を及ぼすのか。しっかりと見定める必要がある。

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