2024年 04月19日(金)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2022.03.27 08:00

【北朝鮮ICBM】挑発をやめ対話に応じよ

SHARE

 ロシア軍によるウクライナへの武力侵攻で世界の耳目が欧州に集まる中、日本周辺の北東アジアでもきなくささが増している。
 今年に入り、相次いでミサイルを発射していた北朝鮮が、新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17」を発射したと発表した。2018年4月にICBM発射実験と核実験の凍結を宣言していたが、自ら完全にほごにした。
 ミサイル技術向上を誇示するだけでなく、核実験再開などさらに緊張を高める事態も排除できまい。ウクライナ情勢や国連安全保障理事会の機能不全で難しい局面にあるが、国際社会の連携が求められる。経済制裁などで圧力を強めつつ、対話のテーブルに着くよう多層的に働き掛ける必要がある。
 北朝鮮は今年1月以降、探知や迎撃が難しいとされる「極超音速ミサイル」などを次々に発射。核実験とICBM発射の再開を示唆してからは、性能を抑える形で新型ICBMを発射していた。
 防衛省によると、今回のミサイルは高角度で飛距離を抑えるロフテッド軌道で打ち上げ、これまでで最も日本に近いとみられる北海道渡島半島の西、約150キロの排他的経済水域(EEZ)内に落下。高度は約6200キロに達し、約71分間で約1100キロ飛行したと分析される。
 通常軌道なら1万5千キロ以上飛行し、東海岸を含む米国全土を射程に収めるとみられる。大気圏再突入時に弾頭を保護する技術を獲得したかは不明だが、脅威が格段に増したのは間違いない。
 なぜ今、挑発行為を活発化させているのか。ミサイル開発過程での必要性に加え、国際情勢をにらんだ綿密さも透けて見える。
 ウクライナ侵攻で欧米とロシアが対峙(たいじ)。米中対立も重なって安保理の機能不全が露呈し、北朝鮮への圧力を強めにくい状況にある。韓国で誕生する保守政権へのけん制の意味も含まれていよう。
 北朝鮮の狙いは、米国との直接対話による制裁の緩和・解除に違いない。核実験や通常軌道によるICBM発射をちらつかせ、瀬戸際外交を展開する恐れが否めない。だが、威嚇に頼る手法が何も生まないことは長年の孤立で明らかだ。
 バイデン政権はこれまでも「前提条件なし」での対話を呼び掛けてきた。没交渉に陥った理由は、北朝鮮がかたくなに米側の「敵視政策」撤回を条件にしてきたからだ。
 米朝間の見解の相違を埋めない限り、対話の扉は開かれまい。米国にすれば制裁を緩めたところで、核やミサイルの開発が停止される保証がなければ交渉する意味はない。北朝鮮は挑発を繰り返しても、自らの首を絞めるだけであることをもう自覚する必要がある。
 国際社会も自戒すべきだろう。国際秩序を揺るがす暴挙に対応できない現状は、さらなるリスクを生じさせる。眼前の危機への対処はもちろんだが、国連改革も喫緊の課題になろう。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月