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2022.03.09 08:41

イメージ真逆?甘口フルーティーの土佐酒が人気 高知県産酵母「CEL―24」で飲みやすい!若者・女性に好評

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県産酵母「CEL―24」を使用した土佐酒。商品化する酒造会社も増えている(高知市内の酒販店)

県産酵母「CEL―24」を使用した土佐酒。商品化する酒造会社も増えている(高知市内の酒販店)

 イメージとは真逆の酒が快進撃! 土佐酒といえば「淡麗辛口」が大きな特徴だが、近年、フルーティーで甘口の土佐酒が国内外で人気になっている。県産酵母「CEL(セル)―24」を使った酒で、日本酒を飲み慣れていない若い世代や女性にも好評だ。この酵母を使う県内の酒造会社も増えてきた。

 酵母は、酒米の糖分をアルコールに変えるために使われ、種類により香りや後味が大きく変わる。県内で使われる酵母の多くは、県工業技術センターが酒造会社や高知大学と共同研究して生まれ、これまでに約20種が開発された。

時代追いついた
 CEL―24は1993年に誕生。リンゴ系の香りが非常に強くて甘酸っぱく、発酵力が弱いため低アルコール酒ができる。当初は「こんなに甘い酒が売れる?」「香水にした方がいいほど香りが強い」と、蔵元の反応はいまひとつだったという。

 そんな中、亀泉酒造(土佐市)が「バリエーションの一つとしては面白い」(西原一民社長)と98年から「純米吟醸原酒CEL―24」を製造。仕込み量は少ないものの、県外の飲食店向けを中心に造り続けてきた。

 それが、この10年ほどで甘口の日本酒が全国で徐々に人気となっていき、CEL―24も「日本酒初心者でも、白ワインやジュースのようで飲みやすい」と評価が高まった。

 さらに、2018年の中国の日本酒品評会で、亀泉のCEL―24を使った酒が部門別の最高賞を受賞。その後、県内他社の酒も海外の品評会で上位入賞が続いた。

 亀泉はCEL―24の仕込み量を増やし、今では酒蔵の75%を占める「看板商品」へと成長。新型コロナウイルス禍の影響を受けず、中国や欧米からの注文も相次いで製造が追いつかない状態という。

 西原社長は「こんなに売れるとは思ってもいなかった。時代が追いついてきたね」と目を細める。

ファン開拓期待
 CEL―24人気を受け、商品化に取り組む県内の酒造会社も増えてきた。

酵母の改良に取り組む県工業技術センターの上東治彦さん=右=ら(高知市布師田)

酵母の改良に取り組む県工業技術センターの上東治彦さん=右=ら(高知市布師田)

 県工技センターによると、2017酒造年度(7月~翌年6月)までは県内18社のうち使用は1、2社だったが、21年度は試験中を含め10社に増えた。

 21年度に初めて仕込んだ有光酒造場(安芸市)の有光尚社長は「極端に華やかな香りに二の足を踏んでいたところもあったが、高知酵母の『顔』の一つという感じになってきた。海外からのニーズもある」と話す。

 土佐酒を多く扱う酒販店、鬼田酒店(高知市)の鬼田知明社長も「高知の酒のバラエティーが広がり、新たなファン開拓につながるのでは」と期待する。

 前途洋々なCEL―24。ただ、酒造会社からは「香りがあまり出ない蔵もある」との指摘も。県工技センターは、香りを強く出す酵母を選抜して育てる改良に取り組んでいる。

 県工技センターで醸造研究一筋の上東治彦さん(62)は「CEL―24の特徴を際立たせて、インパクトの強い酒を造れる酵母にしたい。こんな酒が入り口となって、淡麗辛口の土佐酒にも目を向けてもらえたら」と話している。(井上智仁)

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