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2022.02.28 08:00

【無犯罪証明書】安全と更生の両立を

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 政府は、性犯罪歴のある人が保育や教育の仕事に就けないようにする「無犯罪証明書」制度の検討を始めた。2023年度に新設する「こども家庭庁」の目玉政策と位置付けている。
 犯罪歴を隠して子どもに関わる仕事に就き、犯行を繰り返すケースが後を絶たないためだ。心身に取り返しのつかない傷を残す性犯罪から、子どもを守る仕組みが急がれることは論を待たない。
 一方で加害者が更生し、社会復帰できる環境もまた重要だ。対象となる性犯罪の範囲や情報管理の在り方などを慎重に議論し、子どもの安全と加害者の更生を両立させる制度設計が求められる。
 学校や保育所といった、子どもが日常を過ごす場の安全確保は社会の最優先課題にほかならない。だが、多くの保護者が安心しきれない現状がある。
 20年度にわいせつ行為やセクハラで懲戒処分や訓告を受けた公立小中高校などの教員は200人に上り、うち96人は「性暴力・性犯罪」が理由だった。対策を求める声が高まるのは当然だろう。
 昨年5月には議員立法でわいせつ教員対策法が成立。教員免許が失効した加害者が再交付を申請した際、都道府県教育委員会が再取得を防げるようにした。保育士についても最大10年、再登録を禁止する方針を厚生労働省が示している。
 ただ、子どもに関わる職場は学習塾やスポーツクラブ、ベビーシッターサービスなど多岐にわたる。政府が導入を検討する無犯罪証明書制度は、こうした民間事業を含めて対策の網を掛けることを目指す。
 政府は英国で実施されている制度を念頭に置く。18歳未満の子どもに関わる仕事に就く場合、本人が公的機関に性犯罪歴がないことの証明書を請求し、事業者に提出する仕組みだ。
 被害を防止する効果が期待される半面、人権やプライバシーの観点から「刑を終えた加害者の更生を妨げる」との懸念も出ている。性犯罪の定義や対象となる職種などについて、議論を深める必要がある。
 極めて敏感な情報だけに取り扱いも大きな課題となる。証明書の発行機関や提出先の職場などで情報の漏えいや流用などが起これば、性犯罪歴のある人は別の職場への就職も困難になってしまおう。更生の道を断つことがないよう、厳格な取り扱いが求められる。
 無犯罪証明書を導入し、わいせつ行為をする目的の就職を「排除」したとしても、子どもへの性犯罪の問題が解決するわけではない。犯罪白書によれば、性犯罪の前科が2回以上ある人のうち、被害者が13歳未満の「小児わいせつ型」は再犯した人の割合が8割を超える。
 福岡県は出所後の相談窓口を設け、小児性愛者などの治療費を助成する独自対策に乗り出している。こうした支援の視点も欠かせない。子どもの安全を確保するには重層的な対策が必要だ。

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