2022.02.25 08:00
【ウクライナ侵攻】国際秩序踏みにじる蛮行
国際社会は緊張を高めるロシアに対し、国際法の順守や緊張緩和を要請してきた。そうした思いは裏切られてしまった。冷戦終結後の安全保障と国際秩序を揺るがせる事態だ。各国は緊密に連携して対処することが重要になる。
ロシア国防省は、ウクライナの首都キエフなどの軍事施設をミサイルで空爆し、防空網を制圧したと発表した。地上部隊が侵攻したとみられる報道もある。
プーチン大統領は、自衛目的であり、ウクライナの占領は計画していないと主張している。しかし、うのみにはできない。そもそも侵攻が許されることではない。
被害状況は判然としないが、死傷者が出ているようだ。ウクライナの抵抗は必至で、人的被害の拡大が想定される。ロシアはまず武力行使を停止することだ。
ウクライナ東部地域は、親ロシア武装勢力とウクライナ政府軍との交戦が8年続いている。ロシアのプーチン大統領は、親ロ派が実効支配する東部2地域の独立を承認し、平和維持を名目に派兵を命じていた。
和平実現のための「ミンスク合意」は、ウクライナの不履行と独立承認で存在しなくなったと強調している。身勝手な解釈と言わざるを得ない。ウクライナのロシア人やロシア系住民を守ると訴えているようだが、それが武力行使を正当化する理由にはならないことは明らかだ。
ロシアは米欧に、北大西洋条約機構(NATO)不拡大を確約するように求めてきた。米欧は、加盟は主権国家が自由に選択することだと拒否して交渉は手詰まりとなった。
そうした中、バイデン米大統領とロシアのプーチン大統領は首脳会談の実施に基本合意していた。外交解決の余地は残っているとみられたが、溝は埋まらなかった。侵攻により、ウクライナのNATO加盟への意欲はかえって強まるだろう。
米政権は経済制裁に踏み切り、さらに金融制裁や輸出規制を含む本格的な制裁を準備する。制裁には国によって温度差もあり、さらに急激なインフレや景気の減速という形で跳ね返ってくることも想定される。足並みがそろうかが鍵を握る。
ウクライナからクリミア半島を一方的に編入した制裁で冷え込むロシア経済は、さらなる悪化が見込まれる。プーチン氏は、制裁はロシアの発展阻害が狙いで、ウクライナ情勢は口実との認識を示した。分かりにくい論理だが、そう考えるのであればまず対話できる環境を自らが整えるべきだ。
岸田文雄首相は「ウクライナの主権と領土の一体性を一貫して支持している」との立場を重ねて表明している。在留邦人保護に全力を尽くすとともに、先進7カ国(G7)をはじめとする国際社会と連携して、制裁を含めて適切に対処する必要がある。結束が試される。