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2022.02.24 00:04

【K+】vol.182(2022年2月24日発行)

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K+ vol.182 
2022年2月24日(木) 発行

CONTENTS
・はじまりエッセイ letter184 中西なちお
・特集 思い出の映画館|◎あたご劇場 ◎大心劇場
・フランスからの土佐人便り BONCOIN IN PARIS✉30
・高知を元気に! うまいもの熱伝 volume.56|白ネギ@高知市
・K+インタビュー 話をしてもいいですか vol.184 石田衣代
・日々、雑感 ある日 vol.20
・気の向くままに お気軽 山歩き ;36
・K+ cinema 記憶のなかの映画館⑮
・ちいさいたび #6
・なにげない高知の日常 高知百景
・小島喜和 心ふるえる土佐の日々 第二十九回
・Sprout Table vol.6 モンシェルトントン
・Information
・シンディー・ポーの迷宮星占術
・+BOOK REVIEW
・今月のプレゼント

河上展儀=表紙写真


特集
思い出の映画館
◎あたご劇場 ◎大心劇場

仙頭杏美=取材 河上展儀=写真

昔、街の映画館で見た映画の記憶。
あの時代に戻れるかのような昭和レトロな映画館のこと。



映画の灯をともし続けて

 子どもの頃、親や祖父母に連れられて映画館に見に行った特撮作品や人気アニメ。青春時代に背伸びして、恋人と見た話題の映画。かつて、身近にあった街の映画館を訪れたことのある人の記憶に、きっと残るあの日の映画。
 映画館で映画を見ることが娯楽だった1950年代前半、県内各地に映画館があり、中でも高知市には約30もの映画館があったそうです。その後、テレビ、ビデオ、シネマコンプレックスの登場など、娯楽に接する環境が変わり、次々と街の映画館は閉館。今は県内で単館の映画館は2カ所のみとなりました。両館の主人たちは、映画の灯を消さぬようにと、上映を続けます。
 55(昭和30)年に創業した高知市のあたご劇場。昨年10月に館長の水田朝雄さんが病気で亡くなり、館長の弟の妻・水田サリーさんが管理を、長年スタッフとして働いてきた西川泉さんが上映の仕事を引き継ぎました。54(昭和29)年創業の安田町にある大心劇場。父の後を継ぎ、2代目の小松秀吉さんが館主を務めます。
 昭和の雰囲気が残る両館に入ると感じる、懐かしさと非日常感。そこで映画を見ることは、今の時代の贅沢な余暇の過ごし方なのかもしれません。

大心劇場のレトロな黄色い座席は、香美市にあった土佐山田東映から譲り受けたもので、その前は高知市のテアトル土電のものだったそう

大心劇場のレトロな黄色い座席は、香美市にあった土佐山田東映から譲り受けたもので、その前は高知市のテアトル土電のものだったそう


家族で営んだ街の映画館

 高知市の愛宕商店街近くにたたずむ、創業当時の建物のままのあたご劇場。タイル張りの湾曲したデザインのチケット売り場と、外壁に飾られた往年の映画俳優のポスターが懐かしさを感じさせます。館長の故水田朝雄さんの父・兼美さんが始め、母・二三さんと共に家族で経営してきた劇場。「みんな映画好きで、愛情を持って営んでいました。私も古い建物や映画が好き。次の代まで続くようにしたいです」とサリーさん。「家族で優しく迎えてくれ、お手頃な価格で気軽に来られる映画館でした」。高校生の頃からあたご劇場に通って映画を見てきた西川泉さんは思い出を話します。西川さんは高知松竹ピカデリーで勤めた後、あたご劇場のスタッフとなり、以来約10年、朝雄さんのそばで働いてきました。

2階席がある映画館は高知ではここだけに

2階席がある映画館は高知ではここだけに


映写室に残る水田館長が使っていた映写機

映写室に残る水田館長が使っていた映写機



スナックやビールが並ぶ売店。常連客が西川さんやサリーさんに声を掛けながら好みのものを買って館内へ

スナックやビールが並ぶ売店。常連客が西川さんやサリーさんに声を掛けながら好みのものを買って館内へ






気軽に来られる劇場のままで

 「亡くなるとは考えもしなかったので、朝雄さんとの引き継ぎができないままでした。今、手探りで運営を見直しているところです」と2人。老朽化する建物と高いランニングコスト。それでも上映を続けてきた朝雄さんの思いを受け、2人は継続する道を模索しています。
 これまでと変わらず1日3回程度、1本立てで約2週間上映。映画を選ぶのは西川さんです。国内外のミニシアター系、名作など、自身の心が動いた映画を上映しています。「私がそうだったので、お客さんの負担が少ない、見に来やすい映画館のままでいたい。変える必要があるところは変え、残せることは残して続けたい」と西川さん。「若い人にも来てもらえるようにPRしたいです」とサリーさん。新たなあたご劇場の歩みが始まっています。





プロフィール

水田サリーさん
故水田朝雄館長の弟の兼二さんと2001(平成13)年に結婚。インドネシア舞踊の講師を務めながら、あたご劇場の管理者に。インドネシア出身。42歳

西川泉さん
高知松竹ピカデリーで勤めた後、あたご劇場で働く。現在は映画上映を担当。映画好きで、自主映画上映会を開いていた時期も。南国市出身。51歳


◎あたご劇場
高知市愛宕町1-1-22
問/088-823-8792
休/火
上映映画情報/http://neconote.jp/atago



映写機で映すフィルム映画

 安田町の安田川沿いにある大心劇場。上映のたびに描かれる手書き看板が目を引きます。館内には、約200枚の昭和の映画ポスターが張られ、ノスタルジーを誘います。
 館主の小松秀吉さんの父・博行さんが中山映劇として創業し、82(同57)年に今の場所に移転して大心劇場に改名。小松さんは、大阪で大学時代を過ごした後、家業を継ごうと帰郷します。「3歳から実家で映画を見てきて、映画は映画館で見ないかんと思った。父と同じく、映画の灯を消したくなくて」と小松さん。妻の江利子さんと共に映画館と併設の喫茶店を営み、約40年になります。
 月に1、2回程度約1週間、昼夜2回、邦画を中心に旧作から最近の作品までを上映。県内では、映写機で映すフィルム映画が見られる唯一の映画館となりました。


全国でもまれな1台の映写機で上映する大心劇場。「このフィルムの流し込み作業ができるのは今、全国でも自分だけらしい」と小松さん

全国でもまれな1台の映写機で上映する大心劇場。「このフィルムの流し込み作業ができるのは今、全国でも自分だけらしい」と小松さん




昭和を愛し、昭和を伝える

 「娯楽の原点は昭和30年代にあると思う。その時代が好きやき、昭和の空気を映画で伝えたい」と小松さん。フィルム映画を貸し出す角川や日活、松竹などの配給会社と今も取引し、昭和の名作を上映しています。「お客さんは、団塊の世代以上が多い。高齢の父と来場してくれた娘さんが、『今日はお父さんが元気』って喜びよった。昭和の映画を見て若い頃を思い出して脳が活性化しゆうがやないかなと。見た人に明るい光が差したと思ったらうれしくて」。そんな姿や、多くのお客さんからの「続けてよ」の声に小松さんは力をもらうと言います。
 「小旅行気分で映画を見に来て、喫茶でお茶して帰ってくれたら」。ここに来れば、小松さんが明るく迎えてくれ、昭和に戻ったかのような、非日常の時間が過ごせます。




映画館併設の喫茶「豆でんきゅう」。江利子さんが作る唐揚げやカレーが人気

映画館併設の喫茶「豆でんきゅう」。江利子さんが作る唐揚げやカレーが人気




プロフィール

小松秀吉さん
大心劇場の2代目。大学時代を大阪で過ごした後、帰郷して家業を継ぐ。豆電球の名でフォークソングを歌うご当地シンガーでもある。安田町出身。70歳


◎大心劇場
安田町内京坊992-1
問/0887-38-7062

◎喫茶「豆でんきゅう」
営/8:00~夕方 
    (時間延長あり)
休/月
上映映画情報/http://wwwc.pikara.ne.jp/mamedenkyu/

掲載した内容は発行日現在の情報です。予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

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