2022.01.30 08:34
迫り来る山体―森散歩 番外・伊予富士編(1)
雪のササ原を進む。一瞬、ガスが晴れて寒風山が姿を現した(いの町桑瀬)
靴底のアイゼンが雪に食い込み、ザックザックと音を立てる。目指す山頂はガスの中。20センチほどの雪が積もった登山道が白く、延々と続く。1月下旬。吾川郡いの町本川地域と愛媛県西条市の県境にある伊予富士(標高1756メートル)に登った。
旧寒風山トンネル脇の登山口から、知人と2人で出発した。あいにくの雨。足元を注視しつつ進むが、雪に足を取られることも。春や秋の山に比べて心身共に消耗が激しいようだ。
つづら折りの山道を進むこと1時間。桑瀬峠(同1451メートル)に着いた。体はぽかぽか。ニット帽を脱ぐと頭から湯気がもわもわ。風がびゅんと、ほてりを冷ましてくれたのも一瞬のこと。寒さにぶるぶる凍えた。
四国山地の絶景を期待していたのに、峰々は雲の向こう。見通しが利かず心細い。地図を頼りに2人で尾根を歩き始めた。
と、ガスが薄まり視界が開けた。振り返ると寒風山(同1763メートル)が現れていた。直線で2キロほど離れているのに、山体が迫り来るようだ。存在感の大きさに心細さが吹き飛ぶ。がぜん、闘志が湧いてきた。
今回は、昨年11月まで連載していた「森散歩」の番外編。冬の伊予富士に挑んだ。(森本敦士)